1軍定着へ、杉澤龍が胸に刻む言葉 指揮官からの「打ってこい」…目指す課題克服

オリックス・杉澤龍【写真:北野正樹】
オリックス・杉澤龍【写真:北野正樹】

オリックス・杉澤龍「プロの投手の速い球を強く弾き返せなかった」

 指揮官の言葉を胸に刻んだ。オリックス・杉澤龍外野手が中嶋聡監督から求められた打撃向上に、必死で取り組んでいる。「前回(5月18日)2軍に行く時、監督さんから『守備はいいから、打ってこい』と言われました。結果を残すためにも、打撃を磨いています」。ファームで流した汗の量を裏付けるような日焼けした顔を引き締めた。

 杉澤は東北高、東北福祉大から2022年のドラフト4位でオリックスに入団。大学4年春にはリーグ戦で打率.550、4本塁打、14打点を記録して3冠王に輝き、侍ジャパン大学代表にも選出された。即戦力として期待されたプロ1年目はウエスタン・リーグで92試合に出場し、チームトップの38打点を記録。2軍でのプロ第1号をソフトバンクの有原航平投手から放つなど勝負強さを発揮したが、1軍出場はわずか2試合、打率.200(5打数1安打)にとどまり、存在感を示すことはできなかった。
 
 守備の良さは、折り紙付きだ。打球判断が良く、思い切りのあるスタートで一歩目を切り、ピンチを救ってきた。ファンにインパクトを与えたのは「8番・中堅」で先発起用された今年5月1日のロッテ戦(ほっともっと神戸)。初回2死満塁で、ロッテ・佐藤都志也捕手の放った強烈な真正面の打球を、前に飛び込んでダイレクトキャッチする超美技で、先発の田嶋大樹投手の立ち上がりを救った。

 その一方で、1年目から課題にしてきたのが、打撃だ。「プロの投手の速い球を強く弾き返せなかった。良い当たりもあったのですが、ボールの下を振るなど自分のポイントの中でバットが振れていなかった」という反省から、シーズンオフに派遣された豪州ウインター・リーグで、高めの真っすぐに目付けをして、バットで叩くイメージに切り替えた。そこから外国人投手のストレートに対応できるようになった。T-岡田選手の「高めの真っすぐを意識すればバットが落ちず、低めの変化球も見逃せる」というアドバイスも生かすことができた。

焦る気持ちを胸に仕舞い込む日々…「打ちたい、打ちたいという気持ちが強くて」

 今季は開幕直前の練習試合で右足を痛めたが、4月中旬に復帰すると1本塁打を含む打率.269とアピールし、4月30日に1軍昇格を果たした。ただ、5月1日の先発出場以後、守備固めで3試合に出場(1打数無安打)だけで再びファームに戻った。

 当初は「一発で仕留めなければいけないボールを仕留められないことや、打ちたい、打ちたいという気持ちが強くて、ボール球に手を出しているところもありました」と振り返るように結果は出なかったが、焦る気持ちを抑えてくれたのは「打ってこい」という指揮官のシンプルな言葉だった。

「コツンと当てに行くのではなく、思い切り振ってやろう」。6月初旬のプロアマ交流戦から気持ちを切り替えると、5試合で2度のマルチを含め打率.385と、打撃を改善することができた。

 チーム事情などから、再昇格は7月2日にまで延び、守備固めでの起用が続いた。「僕らは、少ないチャンスで結果を残さなければなりません。心掛けているのは、打席に立ってからの準備です。立ち遅れないように、早めに準備をしています」。今度はバッティングでスタンドを沸かせてみせる。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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