打撃開眼の来田涼斗「必死に」 掴みたい定位置…21歳の好調支える“目付け変更”

オリックス・来田涼斗【写真:北野正樹】
オリックス・来田涼斗【写真:北野正樹】

オリックス・来田涼斗「1球1球、1打席1打席を大事にやっています」

 爽やかにグラウンドで舞う。オリックスの高卒4年目、来田涼斗外野手が俊足好打を武器に1軍定着を目指している。「必死にやっているだけですよ。1球1球、1打席1打席を大事にやっています」。今季3度目の1軍昇格を果たした7月30日以来、先発起用が目立つ。こんがりと日焼けした顔を引き締め、試合後のベンチでは最後まで残ってグラウンドを見つめる。

 来田は2020年ドラフト3位でオリックスに入団し、今季で4年目。小学6年時にはオリックス・バファローズJrでプレー。明石商2年で出場した春のセンバツ甲子園では準々決勝で史上初の先頭打者本塁打とサヨナラ本塁打をマーク。プロ1年目には高卒新人として史上初のプロ初打席、初球、プロ初安打、プロ初本塁打と、21歳にして華々しい球歴を誇る。

 ただ、その後はなかなかチャンスを生かせず、1軍出場は2年目に10試合、開幕スタメンをつかんだ3年目は4試合出場にとどまった。上体が浮いてしまいボールを捉えられず、内角の変化球に手を出してしまうことから「一発で仕留めることができなかった」ことが、好調を維持できない原因だったと振り返る。

 今春の宮崎キャンプでの個別練習でアシスタントスタッフの漆戸駿打撃投手にストレートと変化球をランダムに投げてもらい、ボールを見極める練習を重ねることで「カウントを稼がれていた内角へ曲がるボールにバットが止まるようになった」と頷く。

 今、打撃を支えているのは、ミートポイントを決める「目付け」を変えたことだ。「低めに落ちる系のボール球をよく空振りするので、しっかりゾーンを上げています」という。3日のロッテ戦(京セラドーム)の5回2死満塁で西野勇士投手のフォークを左に運ぶ勝ち越し2点二塁打を放ったのも「目付け」が変えた成果で「目付けをちょっと上げることで、逆方向にうまく打てました」と胸を張った。

オリックス・来田涼斗【写真:北野正樹】
オリックス・来田涼斗【写真:北野正樹】

「打撃も走塁も、守備も……。まだまだ全部が足りていないと思っています」

 好守も光る。2日のロッテ戦の7回1死一、二塁で藤岡裕大内野手の左中間への飛球を好捕し、帰塁できなかった一塁走者の岡大海外野手をダイレクト送球で刺し、ピンチを併殺で断った。7日の西武戦では人工芝にスパイクが引っかかる“不運”で打球処理を誤ったケースがあったが、守備力は確実に向上している。

 改めて野球と真摯に向き合うきっかけになるプレーがあった。6月13日の阪神戦。「1番・右翼」で先発起用された試合の初回に、2つの走塁ミスを犯してしまった。敵失で出塁し、西野真弘内野手の安打で二進したが、3番・廣岡大志内野手の中堅への大飛球で三塁へタッチアップできず、4番・西川龍馬外野手の遊直で飛び出し、併殺になった。

 2日後に登録抹消され、戻った球団施設の舞洲では数多くのノックを受け、打撃練習でもできる限り守備に就いて実戦感覚を磨いた。「打撃も走塁も、守備も……。まだまだ全部が足りていないと思っています。だから、一から取り組みました」。自分を見つめ直してつかんだ現在のチャンス。「新しい来田涼斗」の姿を見せ続ける。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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