鈴木博志“画伯”が描く未来予想図 現役ドラフトで加入…新天地で過ごす「充実した時間」
現役ドラフトでオリックスに加入した鈴木博志「描くのは楽しいです」
芸は身を助く。昨オフの現役ドラフトで中日からオリックスに移籍した鈴木博志投手が、得意のイラストを若手とのコミュニケーションツールとして活用し、チームに溶け込んでいる。
「描くのは楽しいですし、喜んでもらえるのがうれしいですね」。そう言って27歳の右腕が差し出した携帯電話の画面には、元謙太外野手やドラフト3位の新人・東松快征投手(享栄高)、育成ドラフト3位の宮國凌空投手(東邦高)らオリックスの若手選手のイラストがずらり。鈴木がインスタグラムにイラストを投稿しているのを知った選手から「描いてほしい」との要望に応えたものだという。
「元々、美術や図画工作がすごく好きだった」という鈴木が、イラストを描くようになったのは2020年春。新型コロナウイルス感染拡大の影響でプロ野球の開幕が3か月延期されたのがきっかけだった。「おうち時間というのがあったじゃないですか。1日練習して1日休みの繰り返しだったので、ちょっと描いてみようかなと思ったら、ハマったという感じでした」と振り返る。
イラストは紙のほか、タブレットでも描くそうで、「人の顔なら30分程度、背景も含めると2時間弱で描ける」という。「人を描くのは苦手」と話すが「頼んだ人が描いてほしいものを描かないと意味がない」。似顔絵のほか車が好きだという選手には、車をバックにした野球と関係のないイラストも描く。
スポーツカーに腰かけている姿を頼んだ宮國は、「携帯の待ち受け画面にしています。年齢は離れていますが、博志さんは誰にでも声を掛けてくださいます。僕たち新人は18歳なんですが、本当に話しやすいです」と感謝する。一緒に過ごしたファームでは「試合で調子が悪かった翌日に、ブルペンですぐに修正されるなど、野球に取り組む姿勢も参考にさせてもらっています」という。
鈴木は移籍1年目。今季5月21日の1軍昇格後、球威を増したストレートやツーシームを武器にした強気の投球で、19試合に登板。イニング跨ぎもやってのける中、防御率1.75と救援陣を支えている。そのため、2軍で過ごした時に頼まれた選手の要望には、まだ応えられていないという。
「これまでも野球に対してしっかりと取り組んできたつもりですが、これだけ充実した時間を過ごしているのは久しぶりです」と満足そうな表情を浮かべる。イラストの“受注残”は、好調の証しでもある。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)