プロ初登板の川瀬堅斗「心配かけました」 兄・晃と誓う恩返し…彷徨った生命の瀬戸際

ソフトバンク・川瀬晃(左)、オリックス・川瀬堅斗【写真:荒川祐史、北野正樹】
ソフトバンク・川瀬晃(左)、オリックス・川瀬堅斗【写真:荒川祐史、北野正樹】

オリックス・川瀬堅斗が誓う、両親への恩返し

 夢の実現の次は、両親への親孝行――。育成契約4年目で念願の支配下選手登録を勝ち取ったオリックス・川瀬堅斗投手が、5歳上のソフトバンク・川瀬晃内野手と1軍で活躍して「共稼ぎ」の両親を楽にさせることを誓った。

「これまで心配もかけましたし、お金の面で負担もかけました。晃と2人で頑張って、両親にはもう仕事をしなくてもいいくらいにしたいですね」。支配下選手登録された翌日の7月31日、大阪・舞洲の球団施設で弟・堅斗が両親への感謝を口にした。

 男ばかりの5人兄弟。三男は大学まで野球を続け、四男の晃は地元・大分商を経て2015年のドラフト6位でソフトバンク入り。プロ5年目に70試合に出場、翌年は21試合にとどまったが2022年は73試合、昨季はキャリアハイの102試合、今季もすでに70試合以上に出場している強肩、堅守、好打の内野手だ。

 末っ子の堅斗も大分商出身で、2020年の育成ドラフト1位でオリックス入り。制球力がよく、プロ3年目の昨季はウエスタン・リーグで16試合に登板し1勝4敗、防御率3.16。勝負をかけた今季は14試合に登板して1勝2敗、防御率4.27。育成5年目の佐藤一磨投手が今年6月8日に支配下選手登録されたため残り「1枠」となる中、登録期限いっぱいで滑り込んだ。

諦めた支配下選手登録…“吉報”に「ビックリが先でした」

 実は、今季の支配下選手登録を1度は諦めた。7月に登板した2軍戦3試合での防御率は5.52。“最終テスト”の場となった7月28日の中日戦(杉本商事BS舞洲)では先発し4回2/3、92球、被安打7、自責点4と不甲斐ない成績で終わったのだった。

「最後のアピールの場だと思って臨んだのですが、結果を出せませんでした。気にせずにはいたのですが『いいところを見せんといけん』というプレッシャーもありました。来年、また契約してもらえるように頑張ろうと気持ちを切り替えたところでしたから(支配下の)知らせを聞いてうれしさより、ビックリが先でした」と振り返る。

 4年間を支えたことに、環境のよさを挙げる。ストイックに野球に向き合う山本由伸投手(ドジャース)、宮城大弥投手の存在や、昨季6連勝を含めデビューから負けなしの7連勝を挙げた東晃平投手に、今季プロ初登板プロ初先発で初勝利を挙げた佐藤一磨投手が高卒育成5年目で支配下選手登録をつかんでいたことも大きな目標になった。ドラフト同期の山下舜平大投手からもタイプは違うが刺激を受けた。

「家族と、1軍で活躍する晃、同期らの3つの存在があったからこそ、頑張れたと思います」。中学3年の時、自転車に乗っていると車にはねられ、命の尊さを知った。兄弟の中でもとくに心配をかけた堅斗は、両親への感謝の思いが強い。「1軍で投げる資格は持てたので、いつでも投げられるように」。11日のロッテ戦で、2番手としてプロ初登板。3回を46球3安打1失点(自責0)で役割を果たした。さらに自分を磨く日々に、充実の色が見える。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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