宮城大弥を強くした大阪桐蔭との“熱戦” スター軍団に挑んだ16歳「打たれて当然」の発想
オリックス・宮城大弥が思い出す、大阪桐蔭との練習試合
高校野球の熱戦が、胸に響く。今夏の甲子園大会で興南(沖縄)-大阪桐蔭(大阪)の春夏連覇校同士の名門対決が、オリックス・宮城大弥投手の記憶を蘇らせた。「なんとなく、覚えています。名前(校名)もユニホームも島(沖縄)の人間からすると、格好良すぎましたから」。懐かしそうに振り返ったのは、6年前に沖縄で行われた両校の練習試合のことだった。
2018年3月12日の沖縄・うるま市石川野球場。宮城によれば、先発して7回まで投げて交代。9回に再登板し「8イニングを1失点だった」という。当時、大阪桐蔭のメンバーは、二刀流の根尾昂投手(中日)、横川凱投手(巨人)、柿木蓮投手(日本ハム)の3本柱を擁し、4番に座った藤原恭大外野手(ロッテ)を中心に強力打線を誇った。その年、春夏の甲子園を連覇。強豪・大阪桐蔭のなかでも「最強世代」と言われるなどタレントが揃っていた。
そんな強敵にわずか1失点の投球。さらに「柿木さんからセンターオーバーのタイムリーを放って、3-1か3-2で勝ちました」という。まさに“二刀流”の活躍だった。宮城は侍ジャパンの「U-15代表」として、2016年の「第3回WBSC U-15ベースボールワールドカップ2016」に出場。キューバとの決勝戦では敗れはしたものの、3番手で登板し3回を被安打4、無失点の好投をみせていた。
大阪桐蔭との練習試合は、成長著しい宮城との対戦を望んだものと言われている。大阪桐蔭高・西谷浩一監督が、沖縄遠征中に急遽、興南高の我喜屋優監督に申し入れて実現したのだった。宮城は「根尾さんや藤原さん、柿木さんらエグイ選手ばかりでした。高校野球で憧れの存在の人たちと試合ができてよかったと思います」と振り返る。
戦いを終え、勝利するも「何が通用したのかは、わからないですね。正直に言って、ボコボコに打ち込まれると思っていましたから。1つ上の年代の選手ですし『打たれて当然』というか、打たれるという前提で試合に入ったのが、良い方向にいったのではないのかなと思います」と冷静だった。
投打で超高校級の選手と互角以上の勝負ができたことで、当時16歳だった左腕は「練習試合でしたから自信がついたというよりは『ヨッシャー!』という感じで、良い意味で調子に乗っちゃいましたね(笑)」と明かす。それでも、約5か月後には夏の甲子園出場を果たしたのだから、大阪桐蔭との対戦で得た自信は、宮城の野球人生の中で今につながる大きなものだった。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)