衝撃の打率.448…鷹2軍監督も絶賛の育成20歳 “昇格”で目にした「今までと違う野球」

ソフトバンク・佐藤航太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・佐藤航太【写真:竹村岳】

ソフトバンク・松山2軍監督も絶賛の逸材「打ちそうな雰囲気ありますから」

 また面白い育成選手が現れた。ソフトバンクの育成2年目・佐藤航太外野手がファームで躍動している。パンチ力とスピードを兼ね備えた期待の外野手はここまで2軍で8試合に出場し、29打数13安打の打率.448をマーク。三振もわずか2つしかなく、コンタクト能力の高さも見せている。

 佐藤航は2022年育成ドラフト11位で指名され、八戸学院光星高からソフトバンクに入団した右打ちの野手。高校3年夏に出場した甲子園では、2回戦の愛工大名電戦でランニング本塁打を放った。これまでの主戦場は3軍だったが、チーム方針で経験を積むために2軍に“参加”。スタメンで出場した7試合中6試合で安打を放ち、15日からは3試合連続で“ヒーローインタビュー”も受け「初めてです。緊張しています」という初々しいトークでもファンの心を掴んだ。

 松山秀明2軍監督も「コーチの推薦で1番を打たせたんですけど、期待に十二分に答えてくれている。打ちそうな雰囲気がありますからね。タイミングやバッターボックスでの間であったり、常にこうすれば打てるというか、自分のバッティングができそうなタイミングでバットを振れている。ボールへの当て勘もいいですね。追い込まれても、どんな状況でも、そのバッティングをしていけるのが素晴らしい」と絶賛していた。

 独立リーグ球団との対戦が多い3、4軍から、NPBとの対戦になる2軍に上がり、佐藤航は「今まで経験できなかったので、逆にちょっと楽しいです。新しい野球というか、今までと違う変化球のキレとか、真っすぐの速さとか、野球が今、楽しいです」と目を輝かせている。臆することなく、高いレベルの中で戦う時間が、より一層野球を楽しいと感じさせてくれている。

 2軍戦初出場はプロ1年目の昨季に経験していた。高卒育成選手は基本的に1年目は3、4軍が主戦場になるが、昨年9月、偶然が重なった。1軍で体調不良者が相次いだことで2軍もチーム編成が困難に。3軍は韓国遠征に出ており、4軍で筑後に残留していた佐藤航が山下恭吾内野手と2軍に加わった。代打で公式戦初出場した佐藤航はいきなり三塁打を放って結果を残した。「変な運があるんですよね、多分」。限られた2軍のチャンスで即座に結果を残しており、運も“持っている”のかもしれない。

“もう1人”の父にも届けたい活躍する勇姿

 高卒2年目でまだ大学2年生にあたる年齢。今後が楽しみな佐藤航の原点は高校時代にあるという。東京都江戸川区出身の佐藤航は子どもの頃から巨人ファン。坂本勇人内野手に憧れ、青森の八戸学院光星高に進学した。「むしろ(親元を)離れたかったんです。小、中学校の時は親に全部やってもらっていたので、そういう面でも寮に入ったら成長できる部分もあると思った」。中学3年生で佐藤航は自立を目指して、親元を離れる決断を下した。

 家族からは「自分でやるって決めたんだったら最後までやれ」と背中を押してもらった。「ありがたみというか、今までしてもらっていた部分を自分でやらなきゃいけなかったので、そういう面では成長出来ました」。高校での寮生活には心身ともに鍛えられた。「周りに何もないですし、そもそも外出禁止なので……。引退したら外出はできるんですけど、最寄りの駅まで山を降りて行って40分くらいかかる。コンビニまでも歩いて30、40分かかるし、本当に何もないところでした」。野球だけに没頭した高校時代だった。

「やるときはやる。オンオフがちゃんとしている」という八戸学院光星高の名将・仲井宗基監督のもとで、野球人として大きく成長できた。そんな仲井監督からの言葉が今でも励みになっている。「プロに入る時に『頑張れ』って言われたのが嬉しかったんです。今まで全然そういう感じではなかったので。高校の時は『やれ! やれ!』っていう厳しい面を見てきたので、改めて卒業式の時に『頑張れ』って言われると、それはちょっと嬉しかったですね」。今も忘れられない瞬間だ。

 野球に関しては厳しくも、最後は優しく送り出してくれた仲井監督。「お父さんみたいで優しいです。結構ツンデレですね。野球になったらスイッチが入る、いいお父さんです」。自立を後押ししてくれ、東京で応援してくれている家族、そして、青森にいるもう1人の“お父さん”に、プロでの活躍を早く届けたい。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)

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