努力を続ける“育成の星” 慢心なき秋…変わらぬ佐藤一磨の「やるべきこと」

オリックス・ 佐藤一磨【写真:北野正樹】
オリックス・ 佐藤一磨【写真:北野正樹】

支配下選手登録を勝ち取った、オリックス・佐藤一磨「やるべきことは変わりません」

 夢を叶えても、目標を見失うことはない。育成5年目で支配下選手登録をつかんだオリックス・佐藤一磨投手がチームの勝利に貢献すべく、腕を振っている。「周りが僕を見てくれる目が変わっただけで、支配下登録選手になってもやるべきことは変わりません」。育成時代と同様、実直な性格そのままに、今を語った。

 横浜隼人高から2019年の育成ドラフト1位でオリックスに入団。高卒同期のドラフト1位、宮城大弥投手、2位の紅林弘太郎内野手が1軍で活躍するのを横目に「のみ込みの早い宮城に比べ、僕が同じような成績を残すためには10倍も20倍も練習してやっと追いつけるくらい。質も大事ですが、上手い人に追いつくために量をこなさないといけない。それが僕の野球人生。練習あるのみです」と練習を重ねた。プロ5年目に支配下選手登録された東晃平投手の存在も励みになった。

 佐藤は4年目の昨季、初めてシーズンを通して先発ローテーションを守り、8勝(3敗)を挙げウエスタン・リーグの最多勝に輝いた。努力が実って今年6月8日に支配下選手登録。翌9日の巨人戦(東京ドーム)では、菅野智之投手と投げ合い、初登板初先発で初勝利を挙げたことで、今度は育成選手たちから目標にされる存在となった。

 育成契約を5年経験した東は「努力する姿をみんな見てくれてますから、若手選手からはこれまで『一磨さんが支配下になれないなら、僕らはもっと練習しなければいけない』という声が上がっていました。一磨が支配下になったことで、若手にとって新たな目標ができたんじゃないでしょうか」とチーム内の相乗効果を感じている。

 佐藤は「目標にされている実感はありません。野球の上手さだけなら(7月30日に支配下選手登録された)川瀬(堅斗投手)に勝っているとは思いませんし、ボールの強さや抑える力でも、入山(海斗投手)に勝てているとも思いません」と首を横に振る。

「今までなら『育成で頑張っているな』という評価でしたが、1軍でやるには、2軍では絶対に打たれちゃいけないと、自分にプレッシャーは掛けていますね。そこは変わったところかもしれません」。意識は変わったが、努力し続ける姿勢は変わらない。佐藤に「慢心」の文字はない。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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