スクイズ失敗→翌日に戦力外も「新庄監督に感謝」 “苦い思い出”も…育成契約から誓う飛躍

オリックス・上野響平【写真:北野正樹】
オリックス・上野響平【写真:北野正樹】

オリックス・上野響平が日本ハムの新庄監督に感謝する理由

 捨てる神あれば、拾う神ありだ。オリックスの育成・上野響平内野手が、移籍をチャンスと捉え支配下選手登録を目指している。

 日本ハム時代、新庄剛志監督が視察に訪れた練習試合でスクイズを失敗し、注意を受けた翌日に戦力外通告を受けた経緯がある。「新しい環境でフラットな目で見ていただいているので、新庄監督に感謝しかありません」。静かに落ち着いた口調からは、強がっているように感じられなかった。

 人生を変える出来事は、2022年10月22日のみやざきフェニックス・リーグ、日本ハム-中日戦で起きた。ベンチに入らず私服で視察した新庄監督が、攻撃面で仕掛けの少なかった木田優夫2軍監督に「失敗していいから、どんどん経験させてほしい」と苦言を呈し、2回1死三塁でスクイズを空振りした上野には「ボールに食らいついて当てようという気持ちが足りない」と厳しく指摘した。

「1軍で本当に活躍してほしい選手なので」というのが新庄監督の言葉の真意だったが、上野は翌日、球団幹部から戦力外通告を受けることになった。この間のいきさつについて上野は「すでに球団内では戦力外が決まっていたと思います」と、新庄監督が怒りに任せて解雇したとは考えていない。「シーズン中にもヒットエンドランのサインで空振りしたこともありました」とも振り返る。

 上野は大阪府出身。京都国際高では守備範囲の広さと強肩でならし、2019年ドラフト3位で日本ハム入団した。実は、新庄監督に実力を買われていた。上野は2022年4月8日の楽天戦(札幌ドーム)で3年目に初安打(左翼線二塁打)を放つなど、大きな期待が寄せられていた。

オリックス・上野響平【写真:北野正樹】
オリックス・上野響平【写真:北野正樹】

「1球でも多く相手投手に投げさせるなど、しぶとい打者を目指します」

 それだけに、上野には新庄監督に対して感謝の思いしかない。171センチの小兵。「タイプ的にはバントも得意そうに見えるんですが、高校時代からあまり小技を使うケースがありませんでしたから」と自らの技術不足を認める。

 再出発したオリックスでは育成契約となった。それでも「先入観なくフラットに見ていただけますし、日本ハム時代にお世話になった高橋信二打撃コーチもいらっしゃいますので、継続して指導をしていただくことも魅力でした」と後悔はない。

 移籍1年目の2023年は、2軍戦で自己最多の80試合に出場するなど多くのチャンスをもらった。課題とするのは打撃。「本塁打や長打を求められる打者ではありませんから、チームに貢献できるようにどんな球が来てもきれいに逆方向に打てるように練習をしています」といい、コンタクト率を高めるために短いバットを使い始めた。

「ヒットもいいのですが、1球でも多く相手投手に投げさせるなど、しぶとい打者を目指します」。新たなチャンスを与えてくれた新庄監督に、成長した姿を見せて恩返しをしたい。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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