明大・宗山は「美しい選手」 栗山英樹氏も熱視線…プロで活躍するための“意外”な資質

明大・宗山塁【写真:加治屋友輝】
明大・宗山塁【写真:加治屋友輝】

2打数無安打2四球でも「グラウンドに来ないと見られないものを見た」

 昨年の「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」で監督として野球日本代表「侍ジャパン」を優勝に導いた栗山英樹氏(日本ハム球団チーフ・ベースボール・オフィサー)が22日、神宮球場で東京六大学野球秋季リーグの東大-明大2回戦を視察。10月24日に迫ったドラフト会議の目玉、明大・宗山塁内野手(4年)に熱視線を送った。

 ドジャース・大谷翔平投手らに続いて、次代の日本球界を背負う人材なのか──。栗山氏はネット裏からやや三塁側寄りのスタンド最上段に座り、視察した。結果だけを見れば、この日の宗山の成績は“肩透かし”だったと言える。普段通り「3番・遊撃」で出場し、2打数無安打2四球。3回2死の第2打席では、東大先発の右腕・鈴木太陽投手(4年)が投じた内角高めの139キロの速球に詰まらされ、投飛。6回には左中間フェンスギリギリまで飛ばしたが、左飛に終わった。

 それでも栗山氏は、満足そうな笑顔を浮かべていた。というのも、高いレベルで走攻守の3拍子がそろった宗山の評価は、すでに確定済み。報道陣の前で「いずれにせよ、間違いなく打つ選手だと思っているし、グラウンドに来ないと見られないものを見られた。あれだけ美しい選手なのでね」とうなずいた。

“美しい選手”とは、どういう意味なのだろうか。「できることを、しっかり準備して常にやり切っていく。動きを含めて基本に忠実。そういう選手はとても素敵です。(宗山には)そういうところが随所に見られました」と栗山氏は説明する。具体的には、「カウントが変わった時に、誰が外野手の位置などをチェックしているかというと、彼がレフトとセンターの距離感を測っていたりした」と指摘。「野球選手としては当たり前だけれど、当たり前のことを当たり前にできるのは、美しく見えます。そういう選手がプロ野球で活躍すると思っています」と力を込めた。

「よくないことが起こった時にどうするかを見たかった」

 さらに栗山氏は「なるべく多く見て、どちらかと言うと、よくない所は何か、よくないことが起こった時にどうするのかを見たかった」と続けた。優れた所はもう、お腹いっぱいというくらい把握しているのだろう。この日は宗山に欠点は見つからなかったようで、「ピッチャーフライを打った時、しまったと思った瞬間にも、全力疾走ができていた。なんとなくプレーしているようでも、こちらに感じられるものはたくさんあった」と語った。

 現役のプロ野球選手に例えると、どんなタイプの選手なのか──との質問も飛んだ。栗山氏は「誰かという名前は出したくない」とかわし、「誰もが、こういう選手と野球をやりたいと思うのではないかな。特に監督は」と語った。

 ちなみに、栗山氏には宗山の欠点が見つからなかったようだが、4年間を通じて指導してきた明大・田中武宏監督は、物足りない点を感じているのだろうか。そう質問すると、「彼には気の毒ですが、どんな投手が来ても、いつも打つものだと僕は決めつけているので……」と苦笑した。指揮官は、必ず打ってくれる存在と認識しているようだ。宗山には持てる才能を、プロでも存分に発揮してほしい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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