鍵谷陽平&伏見寅威…実現した“最後のバッテリー” 高校時代から続く「何かの縁」

日本ハム・伏見寅威(左)と鍵谷陽平【写真:小林靖、町田利衣】
日本ハム・伏見寅威(左)と鍵谷陽平【写真:小林靖、町田利衣】

鍵谷引退試合の“ラストピッチ”、同じ北海道出身で同学年の伏見が捕手役

 日本ハム、巨人でプレーした鍵谷陽平投手が、今季限りで12年間の現役生活に別れを告げた。9月25日、エスコンフィールドで行われた引退試合。セレモニーの最後に待っていた“ラストピッチ”で万感の1球を受け止めたのが、伏見寅威捕手だった。

「高校時代から知っていて、勝手に僕はライバル視していたんです」と伏見は言う。ともに1990年生まれの道産子。2学年上で駒大苫小牧の田中将大フィーバーに沸いた後の北海道の高校野球界で、名の知れた存在としてけん引してきた。

 東海大四高の伏見は、3年春の全道大会で優勝。4番で主将を務めていた。北海高の鍵谷はエースとして3年夏の南北海道大会で優勝して甲子園に出場。1回戦敗退となったが、聖地の土を踏んだ。

 その後は伏見が東海大を経て2012年ドラフト3位でオリックス入り。新人だった2013年4月29日に札幌ドームで8回の守備からプロ初出場すると、9回に初打席に立った。このときマウンドに立っていたのが、中大を経てドラフト3位で日本ハム入りした鍵谷。右中間への二塁打が、忘れられないプロ初安打となった。

今季から初めて同じユニホームに袖を通すも「最後まで組めなかった」

“運命”とは不思議なものだ。伏見は2021、2022年にリーグ優勝に貢献し、FAで2023年から地元に帰ってきた。一方の鍵谷は2019年途中からトレードで巨人に移籍するも昨季限りで戦力外に。今季から育成で復帰し、7月に支配下を掴んだ。

 しかし1軍昇格を果たすことはなく、1軍を主戦場にしていた伏見とバッテリーを組むことはなかった。伏見にとっても「何かの縁もあって、ファイターズでも同学年で頑張ろうという話もしていたんですけど、最後まで組めなかった」と“心残り”でもあった。

 そんな中で実現した、ラストピッチ。大観衆が見つめる中で、2人だけの時間を楽しんだ。笑顔の鍵谷とは対照的に、涙をこらえきれない伏見は「ああいう形で最後、セレモニーでしたけど関われて凄くよかったです」と感慨深げに話した。

 鍵谷はユニホームを脱いだが、きっとこれからも、2人の「何かの縁」は続いていく。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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