シーズン4打点→CS6打点でMVP 後輩の台頭にも貫いた“信念”、救われた三浦監督の言葉
DeNA戸柱がファイナルS全6試合で先発マスクを被り“今季1号”など攻守で貢献
DeNAは21日、東京ドームで行われた巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第6戦に3-2で勝利した。アドバンテージを含めた対戦成績を4勝3敗とし、7年ぶりの日本シリーズ進出が決定。CSのMVPに輝いたのが、シリーズ6打点をあげた戸柱恭孝捕手だ。山本祐大捕手の台頭もあり、シーズンでは46試合の出場で4打点にとどまった男が意地を見せ「本当に勝ったことがホッとしたというか、良かったなというのが一番です」と安堵。苦しい時期を支えたのは、三浦大輔監督からの一言だった。
過去にも伊藤光、嶺井(現ソフトバンク)らとの併用を経験している戸柱だが、後輩が正捕手に定着するのは初めてのことだった。ひとつしかない捕手というポジションで、ベンチを温める時間が続いた。それでも「上の人が決めることだし、自分ではコントロールできない。(山本は)昨年後半からあれだけ結果を出して今年も打線のキーマンになっていたし、そこは割り切っていました。バチバチしてライバル関係になってもチームにプラスにならないから」。9年目の34歳はどっしりと構え、来るべき日に向けた準備を続けた。
それはまた、今年はじめに定めた自分の“信念”を貫き通すことでもあった。昨オフ国内フリーエージェント権を取得したが、行使せずに残留。4年の大型契約を結んだ。「いい契約をしてもらって、このチームで勝ちたいのが一番」と気持ちを新たにし、簡単なようで意外と難しいひとつの決め事をした。
「どんな状況になっても、チームのためにやり通そう」
ベンチにいても同僚たちとのコミュニケーションを欠かさず、投手陣に目を配った。早出の打撃練習に参加してバットを振り続けた。山本が9月15日に死球を受け右尺骨を骨折して離脱。順位争いが佳境を迎えたシーズン終盤にやってきた出番で、ベテランらしいリードを見せた。CSファイナルステージ第2戦からは伊藤光が離脱。同ステージでは全6試合でスタメンマスクを被り、豊富な経験からくる強気の配球で投手陣を引っ張った。
山本&伊藤光が離脱も…三浦監督も最敬礼「安心して任せられる」
とはいえ、気持ちが沈むときもあった。夏場のとある日、久々のスタメンマスクでチームを勝利に導いたが、翌日はまたメンバー表に名前がなかった。打撃練習前、歩み寄ってきた三浦監督から声を掛けられた。「当分また(山本)祐大で行くけど、昨日みたいに必ず力が必要だから頼む」。モヤモヤがスッと晴れ「モチベーションのひとつになった」と感謝した。
そんな指揮官は「(山本)祐大がメインで被っているときでもしっかり変わらず準備してくれたから安心して任せられるし、投手陣を引っ張っていってくれている」と働きぶりに最敬礼だ。リードだけではなく、19日の第4戦では“今季1号”。シーズンでは0本塁打、4打点だったが、阪神とのファーストステージ第2戦でも2安打5打点と大暴れするなど、CS7試合連続安打とバットでも存在感を示した。
「やられたら仕方ないと腹を括っていました。厚かましい話ですけど、3位からここまできた。追われる方が嫌だと思うし、そういう気持ちの持ち方で甲子園(ファーストステージ)からやってきたので。失うものはない」と戸柱。“最強の挑戦者”として、次は7年ぶりの日本シリーズに挑む。
(町田利衣 / Rie Machida)