宮城大弥の“思考”で変わった曽谷龍平のメンタル 漏らした本音を胸奥に…「責任を果たそう」

オリックス・宮城大弥(左)と曽谷龍平【写真:小林靖】
オリックス・宮城大弥(左)と曽谷龍平【写真:小林靖】

曽谷龍平を“変えた”宮城大弥の何気ない言葉

 歳下の言葉が、弱気な自分を奮い立たせてくれた。オリックスの2年目左腕・曽谷龍平投手は打線の援護がもらえず勝てない時期に、宮城大弥投手の一言で前を向くことができた。「ちょっと、(心に)刺さりましたね」。曽谷が恥ずかしそうに振り返ったのは、本拠地、京セラドームでの練習の出来事だった。

「点が入らないかなぁ……と思ってしまって」。独り言のようにつぶやいた言葉に、宮城がすぐに反応した。「そう思ったら、自分の投球ができなくなってしまいますよ」。諭すような穏やかな口調に、曽谷はハッとなった。「そんな考えではいけないと気付きました」。同じ境遇にいる“後輩”から、考えさせられる一言が飛んできたのだった。

 2000年生まれの曽谷に対して、宮城は1歳下。しかし、プロの世界では2019年ドラフト1位で興南高から入団した宮城が、2022年ドラフト1位で白鴎大から入団した曽谷より3年も先輩にあたる。

 調子が悪い時でも、打線の援護やバックの好守でリズムを取り戻し、勝ち星につながることもある。なかには、調子がよくても勝てない時もある。曽谷も「(打者も)みんな必死にやった結果なので。自分もそんなに調子がいい時ばかりではありませんから」と、不満を漏らしたことは一度もなかったが、無意識な言葉が出てしまったのだった。

 宮城によると、その場面はよく覚えていないという。「全然、覚えてないですね。ただただ、ポロっと言っただけです」。エース格として投手陣の先頭に立つ宮城には、どんな状況でもチームを勝たせるための努力をすることが当たり前なのだろう。高卒2年目で13勝(4敗)を挙げて新人王に輝き、今季もプロ入り後初めての故障で戦列を離れたため規定投球回は逃したが、7勝9敗、防御率1.19の左腕が放つ言葉には重みがあった。

 この一言で、曽谷はこれまで以上に無心でマウンドに立つようになった。立ち上がりを無失点に抑え、順調に打者を仕留めていくことに集中する。ピンチになれば、球場内の時計を探して見ることで心を静め、間合いを取った。「先発として、最低限の責任を果たそう」と腕を振った。

 今季7勝(11敗)は、宮城、アンダーソン・エスピノーザ投手と並ぶチームトップ。6連敗もあったが、この期間の失点は9。1失点の試合も3試合あった。我慢強く投げ続けて1年間、守った先発ローテーション。「これを次の年にどうつなげるか。すべては経験だと思っています」。3年目の飛躍に期待がかかる。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY