比嘉幹貴が呟いた「ここで投げるんやぞ」 同郷の宮國凌空が“引退試合”でハッとした言葉
オリックス・育成右腕の宮國凌空に比嘉幹貴がかけた言葉
同郷の“大先輩”を追う。オリックスの育成・宮國凌空投手が、郷里沖縄の偉大な先輩で今季限りで現役を引退した比嘉幹貴投手の「金言」を胸に、プロの世界で生きていく決意を新たにした。「それまでも意識はしていたのですが、1軍のマウンドを現実のものとして目指す気持ちになれました」。比嘉の言葉を思い出し、宮國が目を輝かせた。
沖縄県宜野湾市出身の宮國が比嘉から言葉をもらったのは、T-岡田外野手と安達了一内野手の引退試合が行われた9月24日の京セラドームだった。本拠地最終戦でもあり、2軍も含めて全選手が集結。他の若手選手とベンチ横の通路から試合を見ていた宮國に、いつの間にか後ろにいた比嘉が背中に手を置き、耳元でささやいた。
「お前もここで投げるんやぞ」。低く短い言葉だったが、宮國はハッと我に返った。「なんか普通の会話だったのですが、そう言われた時に、確かに上(1軍)で投げないといけないんだと思いました。そう言ってもらえるのも、期待をしてもらっているからで、うれしかったですね」という宮國には、このほかにも比嘉の忘れられない言葉がある。
今年1月の新人合同自主トレが行われた大阪・舞洲の球団施設でのことだった。多くの先輩選手を前に「沖縄の後輩だから、こいつをいじめるなよ(笑)」と声をかけ、宮國には「何かあれば言ってこいよ」と比嘉は優しい言葉をかけた。
「もちろん、冗談でおっしゃっているのですが、プロ入りして右も左もわからない時だけに、安心感はありました」と今も感謝の気持ちを忘れない。宜保翔内野手や宮城大弥投手に聞くと、比嘉は同じように声をかけていたそうで郷里の後輩がスムーズにプロ生活を送れるようにという配慮だったようだ。
「支配下登録選手になって、1軍で活躍できる選手を目指して頑張ろうという気持ちになりました」。何気ない一言が、若く未来のある選手を大きく羽ばたかせようとしている。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)