筒香嘉智、亡き友人アナに捧げた日本一 訃報聞き号泣も…願い叶え「見せてあげたかった」
親交深かったテレビ朝日の三上大樹アナウンサーが10月5日に死去した
DeNAは日本シリーズでソフトバンクを4勝2敗で下し、1998年以来26年ぶりの日本一に輝いた。今季途中から5年ぶりに古巣復帰した筒香嘉智外野手にとっても、初めての歓喜の瞬間。「この景色、見せてあげたかったな」。そっと天を見上げ、10月5日に亡くなった三上大樹アナウンサーを思った。
テレビ朝日で主にスポーツ実況を担当していた三上さんは、10月5日に38歳の若さで死去した。筒香がまだ若手だったころに出会って仲を深め、頻繁に食事に出掛けるようになった。「とにかく優しくて、包み込んでくれるような人」。お互いの仕事の話を真面目に語り合ったり、友人であり兄貴のような存在でもあった。
三上さんは神奈川・横須賀市出身ということもあり、大のベイスターズファンだった。時間が許せばプライベートで横浜スタジアムを訪れ、ライトスタンドから声援を送ってくれた。ある年の開幕戦、まだ肌寒さの残る本拠地は雨が降っていた。コートやカッパを着るファンの中で、三上さんは仕事後に駆け付けたスーツ姿のままだった。「『選手がユニホームで濡れてプレーしているのに、僕がコートやカッパを着ちゃダメだ』って言ってね。びしょ濡れになって次の日声が出なくなって、注射を打ちながらニュースを読んでいた。あの人はそういう人なんだよ」。
思い出は一つや二つではない。今年4月、筒香のDeNA復帰が決まると「これで優勝できる」と大喜びしてくれた。5月6日、復帰初戦でいきなりアーチを放った夜も食事をともにした。その席で、本塁打の動画を見ながら三上さん流の実況をしてくれたことは今も頭から離れない。5月15日に福井で行われた巨人戦。観戦に来ていた三上さんを食事に誘うと「明日仕事があるから」と最終の新幹線でとんぼ帰りしていった。球宴前の7月に顔を合わせたのが最後になるなんて、思いもしなかった。
「『どこの三上さん?』って。意味が分からないし信じられなくて」
訃報を耳にしたのはレギュラーシーズン最終カードだった名古屋遠征中だった。偶然にも、三上さんとも交流のある知人たちとの食事中に電話で知った。「最初は『どこの三上さん?』って感じで。もう、みんな大泣き。1、2時間経って落ち着いて、でも意味が分からないし信じられなくて」。ご飯は喉を通らず、ただただ呆然としていた。
「優勝を見たい。優勝してほしい」と三上さんはいつも口にしていた。それほど大好きだったチームは、リーグ制覇こそ叶わなかったが、3位から阪神と巨人を破ってクライマックスシリーズを駆け上がり、ソフトバンクとの日本シリーズも制した。でもそこに、いつもならいたはずの三上さんはいない。「終わった後に連絡を取り合ったり、ご飯に行ったりしているはずだけど、それがないのがね……。LINEも残っているままだし」。悲しみが癒えることはないが、少しだけ約束は果たせた。
ポストシーズン中だったため、葬儀に参列することはできなかった。「ご家族のこともあるので落ち着いたらだけど、いつかお線香をあげに行けたら」。会いに行くのはちょっと遅くなっても、きっと三上さんは許してくれるだろう。お別れのあいさつとともに、日本一の報告が加わったのだから――。
(町田利衣 / Rie Machida)