出場減の28歳に「誰も助けてくれへんぞ」 GG賞3度の名手にも…与えた厳しい“喝”
オリックス・宗佑磨が感謝する波留2軍監督の“喝”
熱いだけでない指導者に刺激をもらった。オリックス・宗佑磨内野手が、今季は育成チーフコーチで来季2軍監督に就任する波留敏夫2軍監督から愛情のこもった叱咤激励を受けた。心機一転、さらなる高みを目指す。
「目が覚めました。熱いだけでなく、成績もすごい方。声を掛けてもらえるのはすごくうれしい。時代とかもあって、そう言ってくれる人も少なくなってきていますから。その思いに応えたいですね」
宗は横浜隼人高から2014年ドラフト2位でオリックスに入団。俊足巧打と俊敏な守備でチームの勝利に貢献してきた。2021年は139試合に出場し131安打を放つなど、打率.272。2022年も130試合に出場、127安打を放って打率.271と、2021年から3年連続120試合以上に出場し、100安打以上を放ってきた。
プロ10年目の今季は97試合出場、68安打、打率.235にとどまり、8月23日からは長いファーム落ちも経験した。そこで育成担当の波留チーフコーチとの新鮮な出会いがあった。2軍が遠征中、大阪の球団施設・舞洲のグラウンド。当時育成の山中尭之外野手の守備練習に、チームに帯同していなかった宗も宜保翔内野手と参加した。
残暑の中、育成担当の由田慎太郎コーチが前後左右に強弱をつけてノック。奇声を上げながらユニホームを真っ黒にしてボールを追う宗に、波留コーチの声が響いた。「38歳まで現役をやりたいんやろ。誰も助けてくれへんぞ」。フラフラになって倒れた宗は「あと10年、やります」と返し、再び立ち上がって捕球の姿勢を取った。
「響きました。ほんとにあのように言ってもらえることがないんで。(波留2軍監督は)熱かったですね。感謝しています」。感銘を受けた宗は、すぐに波留コーチの経歴を知りたいと思い、ネットで検索した。「調べましたよ。すごいっすよ。気合の入った熱い気持ちを前に出したプレーをする選手とは知っていましたが、130試合出場で160本くらいヒットを打っているんです。すごいと思いました」。
「ちゃんとやっておかないと、歳を取ったら体が動かなくなります」
波留2軍監督は横浜(現DeNA)時代の1998年に「マシンガン打線」の2番打者として38年ぶりの日本一に貢献した俊足巧打のプレーヤー。宗が驚いたという1999年には、出場130試合で169本の安打を放ち、15本塁打、70打点。打率.298、21盗塁という驚異的な成績を残していた。
「現役時代の波留さんを知りませんでしたが、熱いだけの方ではありませんでした。僕もまだまだできると思っています」。28歳で日本一を経験した波留2軍監督も「今、ちゃんとやっておかないと、歳を取ったら体が動かなくなりますから。練習して(体力の)貯金を作れば、まだまだやれます。練習は、やったもん勝ちなんです。これからです」と、期待を寄せる。
来季から2軍監督就任を聞いた宗は「いいですね」と目を輝かせた。入団3年目に2軍施設が舞洲に完全移転し、杉本裕太郎外野手らとともに、鍛えられレギュラーをつかんだ。自ら「舞洲育ち」と誇りをもって呼ぶ地で、初心に帰り、決意を新たに11年目のシーズンに向け準備をする。
(北野正樹 / Masaki Kitano)