西武戦力外→無給で単身帰国→世界一 台湾右腕の苦難の1年「我慢、我慢、我慢しながら」

プレミア12決勝の日本戦で5回に登板した台湾代表・張奕【写真:中戸川知世】
プレミア12決勝の日本戦で5回に登板した台湾代表・張奕【写真:中戸川知世】

西武戦力外から1年…張奕が手にした栄冠

「諦めずにここまでやって来れた。自分を褒めたいです」。ファンの残る東京ドームを見回しはにかんだ。チャイニーズ・タイペイ代表の張奕投手にとって15年過ごした日本で、侍ジャパンに勝って手にした世界一は特別なものだった。

 24日の「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」決勝戦。4-0の5回にマウンドに上がると、台湾応援団だけでなく、日本のファンも拍手を送った。2死から連打を浴び、一、二塁のピンチを招いたが、小園(広島)を一ゴロに抑えた。6回、7回は3者凡退。好救援で勝利投手になった。

「小園くんが前回のアメリカ戦でとても活躍していたのは見ていた。なんとか気持ちで負けないように。自分の球を信じて投げました。結果的にゴロになったのでよかったです」

 日本には負けられない理由があった。今から1年前、西武から戦力外通告を受けた。育成契約の打診もなく、合同トライアウトでも声がかからなかった。まだ日本のプロ野球で勝負できる。自信はあったが、台湾に戻ってプレーすることを決断した。

無給で半年間プレー「我慢して我慢して、我慢しながらここまできた」

 台鋼ホークスと練習生契約を結び、給料はない中、プレミア12の代表入りの打診が自らの大きなモチベーションだった。スーパーラウンドで東京ドームに行き、かつての戦友と対戦したかった。そのために、まずは台湾プロ野球で好結果を残すしかない。自らを奮い立たせた。

「複雑な気持ちはあった中で、我慢して我慢して、我慢しながらここまできた。自分はもっと上に行けるんだって気持ちがあったので。諦めずにやってきたのが間違っていなかったことがすごく嬉しい」

 日本相手に好投し、世界一の栄冠を手に入れたが、すでに視線は来季に向いている。「先発として結果を残したいんです。今回の大会は中継ぎでしたが、自信になりました」。もがき苦しんだ1年は無駄ではなかった。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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