DeNA戦力外→引退決意も「中途半端に終わりたくない」 大和が明かした“翻意”の理由

DeNAを退団した大和【写真:町田利衣】
DeNAを退団した大和【写真:町田利衣】

大和は今季42試合の出場にとどまりDeNAを戦力外となった

 DeNAを今季限りで戦力外となった大和内野手。2006年にプロ入りしてから19年間もの間、厳しい戦いの世界に身を投じてきた。「家族の時間をこんなに過ごすのも初めてだし、ゆっくりすることもなかった。この時間を大切にしたいなというのが一番ですね」。現在は平日は穏やかにときを過ごし、休日は3人の息子たちの野球に付きっ切り。37歳のパパは「子育ての大変さをしみじみ感じていますよ」と笑った。

 9月14日の中日戦前に“試合後の呼び出し”を受けた。今季は1軍デビュー後最少の42試合出場どまり。「そのときすぐ、来年の話だろうと感じました」と予感はありながら、試合は普段通りに挑めた。そして試合後に待っていたのはやはり、来季の契約を結ばない旨の通達だった。

「自分の中では、もしかしたら(今年が)最後になるかもなと思っていたし、年齢的にもいつ言われてもいい覚悟はできていました。もうこれで野球をしなくていいのかなという自分と、もう少しできるだろうなという自分。いろいろな葛藤がありました」

 家族に伝えると、まだ幼い子どもは「パパやったじゃん、僕の野球来てくれるじゃん」と無邪気な反応を見せた。小学3年の長男だけは現実を理解しているようで複雑な表情だった。愛妻は「自分の好きなように道を決めればいいんじゃない?」と背中を押してくれた。そして自分の中でひとつの決断を出した。「引退しようかな」。

「やりたい気持ちが1%でもあるし、自分の中でやり切ってない」

 2005年高校生ドラフト4巡目で阪神に入団。出場機会を得るためにスイッチヒッターに取り組み、外野手転向してゴールデングラブ賞も獲得した。国内フリーエージェント(FA)権を行使して、2018年からDeNAに移籍後も、堅実な守備と勝負強い打撃でチームを支えた。

 2022年12月の契約更改後の会見で、幼少期から慢性腎臓病を患っていることを公表。遺伝子検査で2023年1月には「デント病」であることが判明した。国内で数百人しかいないとされる希少疾患であり、加齢に伴い機能が低下していく。「いつかは手術をしないといけない。移植するか透析するか……」と話す。

 塩分の取り過ぎや汗をかくことがあまりよくないとされるが、いずれもスポーツ選手としては難題だ。むくみの症状により、いつもの打撃手袋が合わずにバットが太く感じたり、回復力が遅れることも。「全部それのせいにしちゃう自分もいたんです。でもここまで野球をやれている。先生も『こんな人は初めて』と言っていました」。同じ病気の人に勇気を与えるためにも、グラウンドに立ち続けてきた。

 そんな激動の日々だったからこそ「ホッとした部分もある」とユニホームを脱ぐことが頭をよぎったのだろう。しかし……。「ときが経つにつれて冷静に戻ったというか。やりたい気持ちが1%でもあるし、自分の中でやり切ってないというのが正直なところ。野球と出会ってきて中途半端には終わりたくない自分がいる中で、まだ区切りはつけられない」。

 毎日子どもたちとキャッチボールをして、自身のトレーニングも行っている。「いつ自分の中でタイミングが表れてくるかわからないですけどね。今すぐは、区切りはつけません」。体と向き合いながら、ゆっくりと。でも大和の中の火は消えていない。

(町田利衣 / Rie Machida)

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