DeNAで味わった“感情”「これでいいんだ」 阪神から一変…30歳で得た新境地

DeNAを退団した大和【写真:町田利衣】
DeNAを退団した大和【写真:町田利衣】

DeNAを戦力外となった大和は、2017年オフにFA権を行使して阪神から移籍

 今季限りでDeNAを戦力外となった大和内野手は2017年オフ、国内フリーエージェント(FA)権を行使して横浜の地へやってきた。悩み抜いた末に12年間を過ごした阪神を出る決断を下し、30歳で袖を通した新たなユニホーム。はじめは「ベイスターズに来て野球観がひっくり返った」というほどの衝撃を受けた。

「楽しく野球をするとか考えたことがなかったんです。試合が終わって、サヨナラで勝った試合以外であんなに喜び合ったこともなかったし、ワイワイガヤガヤ、ベンチで冗談を言い合いながらやるのもなかった。『なんだこれ』って驚きましたけど、『ああ、これでいいんだな』と思えた自分の方が大きかったですね」

 2005年高校生ドラフト4巡目で樟南高から阪神に入団。“時代”と言ってしまえばそれまでだが、「試合中に笑おうもんなら『何わろてんねん!』と言われるから、仮面みたいな感じでした。上下関係がすごい厳しかったとかではないんですけど、自分たちが年上の人たちに遠慮していたっていうのはありますね」。ベンチで冗談を言い合うなんて、考えたこともなかった。12年間で“当たり前”だった光景が、移籍で一変した。

 DeNAは2017年にリーグ3位から下克上で日本シリーズに進出。ソフトバンクに敗れて日本一にこそ届かなかったが、若いチームの勢いが最高潮となったときに大和は加入した。新たなチームの“色”で「喜び方、感情がものすごく豊かになったのは間違いないですね」と自身にも変化が生まれた。

ラミレス監督は「プラスの声をかけてくれた。すごく助けてもらいました」

 中でも感謝しているのが、当時のアレックス・ラミレス監督だ。「最も野球観を変えてくれたのはラミちゃん。どんなマイナスなことがあっても、全部プラスに変えられる思考がすごすぎて。言葉のかけ方ひとつにしても、何かあるごとにプラスの声を掛けてくれた。すごく助けてもらいました」と笑顔を見せた。

 FA宣言をしたときは「全然出ていく気はなくて、純粋に周りの評価を聞いてみたかったんです」と明かす。DeNAの条件が最もよかったわけでもなく、出場機会が保証されていたわけでもなかった。しかし「気付いたら、といってはおかしいけど、イメージできたのが横浜スタジアムで野球をしている自分だったんです」。

 それから7年のときが経ち、戦力外を告げられベイスターズを退団した。「イメージ通り、いや、イメージ以上だったかもしれないです。FAで来て7年もいるなんて、変な話、球団も思ってなかったんじゃないかな。若い子が育つまでかなくらいの考えで自分の中でもいたし、これだけ長くやらせてもらったのは本当に感謝です」と最後まで強いチーム愛を示した。

「あのときの決断……良かったと思います」と大和。阪神で12年、DeNAで7年。どちらもかけがえのない経験となった。

(町田利衣 / Rie Machida)

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