91敗西武が抱える“ジレンマ” 拠り所は大ベテラン…球団幹部が吐露する現状
5000万円ダウンの年俸1億円でサイン「常にフラットな状態でいたい」
NPB現役最多で歴代10位の通算478本塁打を誇る西武・中村剛也内野手が5日、5000万円ダウンの年俸1億円(金額は推定)で契約を更改した。来季はプロ24年目で、8月15日には42歳となる。前日(4日)に更改した同い年の栗山巧外野手とともに、チーム最年長コンビは健在だ。しかし、チームは今季12球団最多の91敗を喫してリーグ最下位に沈み、2人を脅かす若手が育っていないのも事実。球団にとっては痛しかゆしだ。
リーダー気質の栗山とは対照的に、中村剛は常にマイペースでユーモラスな雰囲気を漂わせる。もちろん内に秘めた闘志はあるはずだが、激情を露わにすることはめったになく、この日も「どちらかというと集中力というよりは、常にフラットな状態でいたいと心掛けています」と明かした。
プロ23年の“長持ち”の秘訣を聞くと、「ずっとこんな感じだからじゃないですかね。やる気があるのか、ないのかみたいな、こんな感じで長いことやらせていただいています」と笑わせた。
今季は58試合出場、打率.191(188打数13安打)、7本塁打14打点。7月11日に右手関節炎などのコンディション不良で出場選手登録を抹消されると、そのまま1軍に戻ることなくシーズンを終えた。スタメン出場は47試合で、4番も23試合で務めた。
中村剛にとってシーズン7本塁打は、前年オフに左膝を手術した影響でわずか26試合4発に終わった2013年以後、最近11年間では最も少ない。それでもチームでは外崎修汰内野手、佐藤龍世内野手と並んで最多という、寂しい現実がある。西武の今季チーム本塁打は、リーグワーストの60本だった。
一方、栗山も今季は60試合で打率.226、1本塁打12打点。8月31日の日本ハム戦では、1点ビハインドの8回に代打逆転2ランを放ち、9月1日の同カードでは、2点ビハインドの9回2死満塁で値千金の押し出し四球を選び、逆転サヨナラ勝ちにつなげた。こちらもまだまだチームに不可欠な存在である。
広池球団副本部長兼編成統括「出ずっぱりになって難しかったと思う」
NPBで来季、中村剛&栗山コンビより年上で現役続行が確定しているのは、4学年上にあたるヤクルト・石川雅規投手ただ1人。
契約更改交渉に当たった広池浩司球団副本部長兼編成統括は「中村は体さえ万全なら、まだまだやってくれると思うけれど、今年は出ずっぱりになった時期があって、体調を整えるのが難しかったと思う」と指摘した。長打力に陰りは見えないが、さすがに毎日スタメンで出るのは年齢的に酷だろう。
「中村と栗山はあれだけのレジェンドですから、いつまでも現役でやってほしいという思いがありますし、ファンも同じだと思います」と広池氏。一方で「彼らを追い越すような若手に出てきてほしいのも事実。どっちとはなかなか言えないですし、両方を求めていきたいです」と複雑な表情を浮かべ、「2人は素晴らしい姿を見せてくれているので、むしろ(若手に)中村や栗山の練習を見て感じてほしい」とも付け加えた。
中村剛は「今まで目標を立てることはあまりなかったです。ホームランをいっぱい打ちたいとか、おおざっぱな目標しか立ててこなかった。来年もそんな感じで“適当に”やりたいなと思います」と穏やかな笑みを浮かべるばかり。ただ、「ある程度試合にさえ出られれば、まだ本塁打を量産する自信はあるか?」と聞かれた時だけは、「その自信がなければ、辞めていると思う」と少しだけボルテージを上げたように見えた。
ベテランコンビ健在は頼もしい限りだが、それだけではV奪回は覚束ない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)