太田椋が得た“余裕”「打ちにいっても打てない」 1軍定着で生まれた「選択する」心理
オリックス・太田椋「ピッチャーは僕の打てない球を投げてきます」
シンプルに自分のバッティングを貫く。オリックスの太田椋内野手が、打者の本能を捨て「好球必打」でキャリアハイを目指す。「ムキにならないことが大事かなと思います。打てない球を、絶対に打ってやろうとは思わない。あくまで自分のスイングで、自分が打てる球だけを選択するんです」。静かな口調で打席での心境を語った。
太田は天理高(奈良)から2018年ドラフト1位でオリックスに入団。プロ6年目の今季、7月21日の楽天戦(ほっともっと神戸)で右踵(かかと)を負傷し約1か月、戦線離脱したものの91試合に出場。高い得点圏打率で「3番」に起用されることも多く、規定打席には足りなかったが打率.288でキャリアハイの成績を残した。
打席での意識の変化が、好結果に結びついたという。「ピッチャーは僕の打てない球を投げてきます。その球を無理に打ちにいっても打てないんですよ。完璧に投げてきた球を打ちにいかず、失投した球を打つということが大事だと思います。打てない球を打ちたいと思わず、甘くなった球を逃さないということです」。
抑えられた球を意地になって仕留めにいこうとして打撃の形を崩すのではなく、打てる球を自分のスイングでバットを振ることで生まれる好循環を描く。「まずは怪我をしないことが大前提ですが、好不調の波を少なくするためにも常に高いレベルを保ちたいですね」。2022年の日本シリーズで初回先頭打者として初球本塁打を放った積極性に、増した安定感でチームをけん引する。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)