震災で実家が全壊→1年後に中日Jr.へ 石川から片道2時間半で練習へ…逸材小学生、母の“献身”
チームは2連敗で敗退も、2戦連続先制打で気を吐いた小林啓選手
母の支えに感謝しながら、バットで気を吐いた。「NPB12球団ジュニアトーナメントKONAMI CUP 2024~第20回記念大会~」で、中日Jr.は2連敗を喫し敗退したが、チームで唯一人石川県から参加していた小林啓選手(6年)はいずれも「3番・三塁」で出場し、2試合連続先制タイムリーを放った。
27日に神宮球場で行われた阪神Jr.戦。初回1死二塁の先制機に小林が打席に立つと、相手の外野陣は前進守備を敷いた。「外野が前に出てきたので、なめてんのか、と思いました」と負けん気に火が付いたスラッガーは、相手投手の暴投で走者が三塁に進んだ後、カウント2-2から5球目の真ん中の球をとらえた。打球は軽々とセンターの頭上を越え、ワンバウンドでフェンスの向こうへ。先制のエンタイトルツーベースとなり、塁上で胸を張った。
もっとも、チームはその後逆転され1-4で惜敗した。前日(26日)のヤクルトジュニア戦でも、小林自身は初回に先制左前適時打を放ったが、終わってみれば1-8の5回コールド負けだった。計5打数2安打2打点1四球と実力を示したが、「味方の投手たちもすごいと思っていたのですが、他のチームの投手のレベルの高さにびっくりしました」と、上には上がいることを思い知らされた大会だった。
今年の中日ジュニア16人を在住県別に見ると、愛知県が6人、静岡県が5人、岐阜県が2人、三重県も2人で、小林選手だけが石川県。チーム結成から3か月間、毎週土・日には両親が代わるがわる、金沢市の自宅から全体練習や練習試合が行われる愛知、静岡、岐阜まで、遠い時には片道2時間半かけて車で送迎してくれた。母・香子(きょうこ)さんは「12月に入ってからは雪も降るようになって大変でした」と明かしつつ、「啓が『ドラゴンズジュニアは周りの選手のレベルが高くて、今までやったことのない練習をやらせてもらえる』と楽しそうだったので、よかったと思います」と目を細めた。
実は、今年の元日の能登半島地震で、輪島市内の香子さんの実家が全壊した。小林と香子さんも前日の大晦日まで家族で滞在していたが、際どく難を逃れた。「1人で住んでいた私の父(小林の祖父)が、金沢市内に入院中で不在だったことも、不幸中の幸いではありました」と香子さんが明かす。
小林は「今年の1月は悲しかったですが、ドラゴンズジュニアに選ばれた時には、自分ができる精一杯のことをやって頑張ろうと思いました」と“衝撃の1年”を振り返った。中学に進む来年は、シニアリーグで硬式に挑む。被災地の復興と歩調を合わせるように着実に力をつけて、石川を代表するプレーヤーに成長してほしいものだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)