素振りの“しすぎ”に待った「マイナスの可能性」 イチロー氏が指摘する“質なき量”のリスク

高校球児を指導したイチロー氏「素振りはゆっくりでいいから正しい形で」
基本練習で闇雲に量をこなしたところで、悪癖がついては意味がない。レジェンドが球児たち伝えたのは“クオリティ”の重要性だ。MLBマリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏が、昨年11月9日から2日間にわたり大阪・大冠高で野球部員たちを指導。その中で、素振りやキャッチボールなどを「1つ1つ丁寧にやるイメージで」と語る場面があった。
2020年2月に「学生野球資格回復制度」の認定を受けたイチロー氏は、同年から毎年各地の高校生を指導しており、大冠で9校目。公立ながら2017年夏の大阪大会決勝で大阪桐蔭と激闘を繰り広げるなど、「強豪私立を倒す」を目標に掲げる同校の選手たちに、時に厳しい言葉を交えながら心構えと技術を伝えた。
中でも強く訴えたのが、“質の高い基礎”を積み上げる大切さだ。2日目の練習で選手たちと並んで素振りをする際、こう語りかける場面があった。
「怖いのは良い形を保てないと悪い癖がついてしまうこと。良くない形で1000スイングするならば、しない方がいい。頑張ったという支えにはなるかもしれないけれど、実際にはマイナスになる可能性があるから気をつけて。数をやる伝統があるんだろうけれど、どれだけ正しい形でできるか。中身は気をつけて。半分にして別の練習をしても(いい)」
公立高校で時間や場所の制限がある中、どう激戦区・大阪で勝てる技術を高めるのか。前日の練習を見ていて、イチロー氏が気になった点だったという。「効率良く練習をしたいのは分かる。でももっと大切なのはクオリティ。基本ができていないうちに練習が進むと、なかなかものにできない」。打撃で下半身を使う感覚がわからないという選手にも、「素振りは全力でしないでいい。ゆっくりでいいから正しい形で振って」と助言する場面もあった。
続くキャッチボールでも、前日の練習から「スローイングの数が多いと思う。もう少し少なくして別の練習をやった方がいい」と提言。長い距離を投げるよりも、30メートル程度の短さで確実に投げることを推奨していた。

股関節を割って地面を“つかむ”ことで「劇的に変わると思う」
また、イチロー氏がウオーミングアップの段階から重要性を説いたのが、股関節の使い方だ。バットを持ってセーフティの動きをして走ったり、最後にスライディングを入れたり、実戦をイメージした同校独特のダッシュのやり方に「すごくいい練習をしている」と語ったイチロー氏。打球判断時の動きについて、「(両足をしっかり地面につけて、重心を落とす動きをして)この体勢をつくってほしい。僕は股関節を割って(地面を)つかんでいる。僕の動きの大事な要素です。劇的に変わると思う」とアドバイスした。
2日目のアップ時には自身が取り組む走り方を伝授。「(股関節を)引っ張ってくると脚が出てくる。そうするとストライドが伸びると思う」と自ら手本を示し、「股関節をイメージして最終的に膝を振り出す、とにかく股関節を前に。バントも手じゃない。脚でコントロールする」と選手たちに解説した。
イチロー氏は「(走ることは)うまくなるために、アスリートにとって基本の基本。野球選手は走らなくていいという考え方があるけど、走れないと駄目でしょう。スピードがあるとかないとかじゃなく」とも。高校球児たちも、「走る、投げる、打つのすべての動きで、股関節を使うことの大切さを学んだ」(加藤日向主将)と貴重な学びを得たようだった。
(First-Pitch編集部)
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