引退のT-岡田が若手に送った叱咤 最後まで「しっかり投げろよ」と伝えた“理由”

昨季限りで現役を引退したT-岡田【写真:小池義弘】
昨季限りで現役を引退したT-岡田【写真:小池義弘】

現役引退のT-岡田「自分のいいところを伸ばしていってほしい」

 後顧の憂いなく若手の躍動を見守る。昨季限りで現役を引退したオリックス・T-岡田外野手が、若手選手に期待を込めエールを送った。「才能のある選手がいっぱいいます。悪いところを直すというより、もっともっと自分のいいところを伸ばしていってほしいですね」。

 T-岡田は履正社高時代に通算55本塁打を放った長距離砲で、2005年の高校生ドラフト1巡目でオリックスに入団。高卒プロ5年目には33本塁打を放ち、本塁打王のタイトルに輝いた。直近3年はコンディション不良のため、ファームでの調整が続いた。そんな中で才能のある多くの選手と接した。面倒見がよく、いじられても笑顔で返してくれる優しさがある。だからこそ、20歳近く離れた若い選手からも「Tさん」と慕われた。

 打撃などの相談を受けることも多く、杉澤龍外野手からはウインターリーグで派遣されたオーストラリアから、ボールの目付の仕方のアドバイスを求められたこともあった。また、父のように慕う川瀬堅斗投手にはピンチのマウンドに「しっかり投げろよ」と叱咤の声を送ったこともある。

 現役最後になった9月24日の西武戦(京セラドーム)では、マウンドに立つ川瀬を一塁の守備位置から見守ることもできた。「打たれましたけれど、彼はまだまだ成長途中ですから来年以降、いいピッチャーになると思います。経験を無駄にせず、とにかく前を向いて頑張っていってほしいですね」と、初めて1軍の同じグラウンドに立てた喜びを振り返る。ピンチのマウンドでは「緊張しているんかいな。しっかりせえよ」と笑顔で声を掛ける場面もあった。

「全く同じシチュエーションっていうのは一生ないので。その時にどれだけ準備をしてどれだけ自分のいいものを出せるか。その中でほんとに何が起こるか分からない楽しさであったり、最後まで諦めない気持ちであったり。1つではないのですが」と野球の魅力を語る。

 引退後は、指導者の道に進む安達了一内野守備・走塁コーチや小田裕也育成コーチと、ドジャースタジアムでMLBのナ・リーグ優勝決定シリーズ第6戦を視察。しばらくは解説者として外部から野球を見る仕事に携わることになりそうだ。

「今後のことはわかりませんが、僕はオリックス・バファローズで19年間お世話になってここまでやってくることができました。恩返しと言ったらおこがましいのですが、何か少しでもチームの力になりたいという気持ちはあります」。指導者としてオリックスに戻ってくる日をファンだけでなく、選手らも待ち望んでいる。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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