「髪の毛は切りません」 レジェンドOBから“指摘”もやんわり回避…宮城大弥の信念

オリックス・宮城大弥【写真:真柴健】
オリックス・宮城大弥【写真:真柴健】

オリックス・宮城大弥「髪の毛は切りません。短い髪型は似合わないんです」

 譲れない一線がある。オリックスのエース・宮城大弥投手が「日本一の投手」と評価してくれた球界のレジェンドで球団OB会長の山田久志氏が告げた「短髪の勧め」をやんわりと拒否し、長髪を貫く。「そんな評価をしていただき、ありがたいことです。でも、髪の毛は切りません。短い髪型は似合わないんです」。宮城が恐縮しながら耳に被さる長髪をかき上げた。

 山田氏の「短髪指令」が飛び出したのは、2024年12月に開かれたOB総会での報道陣との取材中のこと。背番号を「18」に変更し2度目の開幕投手に指名された宮城について話が及び「髪を切らさないといけない。長すぎるな。(長髪の)今永(昇太)の真似をしているのかと思ってね、心配しているんだ。ゲン担ぎかもしれないけど」と、冗談も交えながら指摘した。

 山田氏は、秋田・能代高、富士製鉄釜石から1968年ドラフト1位で阪急(現オリックス)に入団。下手投げとして日本球界最多の284勝を挙げ、12年連続で開幕投手を務め、阪急の黄金時代を支えた。

 長髪に対する苦言は、技術だけでなく立ち居振る舞いも含めてのこと。プロ球界のトッププレーヤーとして成長してほしいという願いが込められているのは「いいピッチャーだわ。俺が大好きなピッチャー」という言葉からも明らかだ。「すべてが一級品だよ。ボールそのものにも文句はないし、ハートもある。ああいうタイプのピッチャーは育たないしね。立派に育てたよね」と、宮城の自己研鑽の素晴らしさと球団の育成方針の確かさを評価する。

 山田氏の言葉を伝え聞いた宮城は「偉大な投手の方にそういう言葉をいただけるのはありがたいことで、もっと頑張らなくてはいけないと思います」と感謝しながら、「実は短髪が似合わないので……」と短髪指令はやんわりと“拒否”した。調髪を頼んだ選手のミスで5厘刈りの坊主頭にしたことで「神様、仏様、宮城様」と全国的な人気を呼んだ宮城だが、自身の中で短髪は「NG」だという。

 山田氏は「やることはやっているから、成績さえ残してくれたら」と宮城の実績を認め、最後は長髪にお墨付きを与えた。宮城も「認めてもらえるよう、しっかりと頑張りたいと思います」とレジェンドの思いに応えるつもりだ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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