年始に押した“最初のスイッチ” 復活を誓う阿部翔太の覚悟…「絶対に優勝したい」
オリックス・阿部翔太「経験がなく突っ走ることしかできなかったんです」
2年前の自分を取り戻す。オリックス・阿部翔太投手がデータ解析を基にストレートのキレを取り戻して、自身の復活と王座奪還を目指す。「2度も怪我をして、何もできなかった1年。チームが困った時に『ここは阿部しかおらん』と思ってもらえるようになりたいですね。入団してから初めてのBクラスでしたから、もう絶対に優勝したいですね」。笑顔がトレードマークの阿部が、表情を引き締めた。
阿部は大阪市出身。酒田南高、成美大(現福知山公立大)、日本生命から2020年ドラフト6位でオリックスに入団。28歳でプロ入りしたオールドルーキーは、セットアッパーとしてプロ2年目に44試合登板し、リーグ連覇と日本一に貢献。2023年も49試合に登板し、3連覇を支えた。
プロ4年目の昨季は右肘痛や左太もも裏の肉離れなどもあり15試合登板、投球回14回2/3にとどまった。2年連続して日本シリーズまで戦い、短いオフの間も次の年に向け自分を追い込む練習を続けたが、体が悲鳴をあげていたことに気付けなかった。
「長くプロでやっている人は疲れを取ることにも気を使っているのでしょうが、僕には経験がなく、もう突っ走ることしかできなかったんです」と振り返る。コンディション不良は、ボールからキレを奪ってしまった。「真っすぐの球威がなくなってしまったのが1番ですね。良い時は、球速以上にキレのある真っすぐで勝負ができていたのですが……」。
伝家の宝刀、スプリットも伸びのあるストレートがあってこそ生きる。トレーニング方法を見直すとともに、昨オフから取り組んでいるのが好調時のデータを基にしたフォームの修正だ。基になるのは、球団のデータ班が作成した動作解析で「岸田(護)監督と厚澤(和幸投手)コーチがデータ班に依頼してくださったのですが、思っていた以上に体の使い方の違いが出ていました」という。
秋季キャンプでの投球練習では、体重移動を細かくチェックしながら時間をかけて投げ込み、久しぶりにシャドーピッチングにも取り組んだ。自主トレ期間に移った後も、大阪・舞洲の球団施設でフォーム固めを継続。施設が閉鎖された年末も31日までジムでトレーニングを行い、年末年始も休んだのは2日だけ。球団施設が再開された4日の朝、室内練習場の照明のスイッチを入れたのは阿部だった。
「焦りもあるんですが、ガムシャラにやればいいという問題でもありません。年齢も年齢なんで、頭を使ってキャンプに向けて計画的にやっていきます。肘に不安はありませんから、しっかりと自分の持っているものを出せるようにして、今年は勝負したいと思います」と目を輝かせる。投手キャプテンに就任した5年目、目標とする「50試合登板」でチームを引っ張る。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)