12年目で向き合った“逃げの精神” 体重5kg減で臨む30歳…居場所確立も「ごまかしていた」
![オリックス・石川亮【写真:北野正樹】](https://full-count.jp/wp-content/uploads/2025/02/08094011/20250208_ishikawa_kma.jpg)
オリックス・石川の胸中「取材されることは僕の働きを認めていただいたからこそ」
逃げずに自分と向き合う。オリックスの石川亮捕手が、チームの流れを変える“第3の捕手”の座を確保するため、体を絞り抜いてキャンプに臨んでいる。「5キロ減りました。今年は動きます」。引き締まった顔で話を切り出した。
石川は神奈川県出身。帝京高から2013年ドラフト8位で日本ハムに入団。プロ10年目を迎える2022年オフにトレードで移籍したオリックスでは、同学年の森友哉捕手、若月健矢捕手に次ぐ第3の捕手として、2023年のリーグ優勝に貢献した。
オリックスでは、当時の中嶋聡監督や水本勝己ヘッドコーチの近くに座って戦況を眺め、選手らを鼓舞する声やジェスチャーでチームに貢献してきた。その働きは球団や首脳陣、チームメートだけでなくファンからも高く評価されてきた。石川自身も、その評価には満足していた。ベンチ内での貢献について取材を受けると「取材されることは、僕の働きを認めていただいたからこそ」と胸を張った。
しかし、移籍2年目の昨季に気付いたことがあった。「オリックスに来てリーグ優勝や日本シリーズも経験させてもらいました。形的にはすごくよかったのですが、昨季は試合数や出場機会が全然物足りないというのは間違いありません。(2023年は)優勝というものでごまかしていたような感じがしたので、そこはやっぱり……大きく試合数は稼ぎたい。何試合というより、目の前の試合に貪欲にいく感じです」。声を出すことで評価を受けても、目標とする「チームを勝たせることができる捕手」を実現するためには、試合に出なければならない。
「僕に欠けているのはスキルアップすることです。監督やコーチが試合に使ってみよう『今日は亮でいこう』と言ってもらえるまで、僕の実力を上げていく必要があると思っています。僕の場合、立場、立場と結構言っていただいたり、立ち位置という言葉がよく使われたりしますが、それは自分の中では“逃げ”かな、と思っています。ユニホームを着る以上はやっぱり試合に出ること、キャッチャーであれば試合に勝つこと、1点でも少なく抑えるのが1番のやりがいなんです」
「プロ野球人生があと何年送れるか、ここからにかかっていると思う」
第1歩としての取り組みは、2024年シーズン直後からのトレーニングだ。「1年間通してパフォーマンスを落とさないために練習方法を変えました。試合に出ることが少なければ、運動量が減って試合に出ている人よりパフォーマンスは落ちてきます。常にスイッチを入れておくという意味でも、強い負荷を少しかけて、より強い出力が出せるように練習方法や期間などのバランスを変えて、下半身に重点を置きました。それが基礎的な根本的なフィジカルの強さにつながってきます。怪我防止と根本的な下半身の強化になります」。
今オフも自主トレは、鹿児島の徳之島・天城町でソフトバンクの近藤健介外野手が率いる「近藤塾・チーム天城」に参加。トレーニングで5キロも体を絞り、頬も引き締まった姿で戻ってきた。
「言いたくないんですが、ここからトモヤ(森)を超えようとか、若月を超えようとかということは正直、あまり考えていません。1軍の戦力として143試合ある中で、3人目の捕手が必要になることは絶対にあります。流れを変え、雰囲気を変えられるキャッチャーになれるのは僕しかいない、それが僕の強みであり長所。そのためには、自分自身が底上げしないと試合には使ってもらえないと思うんで」
ムードメーカーを卒業する気持ちはない。ただ、それだけで10年以上、プロの世界で生きていけるわけではない。60試合(2021年)もマスクを被って投手をリードしてきたのは、捕手としての技術の高さを兼ね備えているからだ。
「チームがうまくいかない、流れがよくない時というのは、逆に言えば僕たちみたいな選手にとってはすごくチャンスではあるので。そこをやっぱり逃がしたくありません。移籍して3年目、監督が変わるなど環境も変わりますから、気持ちを新たに自分の立ち位置を狙っていいんじゃないかと思っています」
プロ12年目のキャンプは、B組スタートとなった。「プロ野球人生があと何年送れるか、ここからにかかっていると思うので」。貪欲に“第3の捕手”を目指す。