女子応援団長が着込んだ学ラン「違和感は全くありません」 選抜で変わりゆく応援の景色

二松学舎応援同好会で部長を務める鎌ゆり奈さん【写真:宮脇広久】
二松学舎応援同好会で部長を務める鎌ゆり奈さん【写真:宮脇広久】

大会初日第1試合勝利の二松学舎大付「4年前は応援部員全員が女子」

 18日に甲子園で開幕した「第97回選抜高校野球大会」では、アルプス席の応援風景にも変化が見られる。たとえば、応援団員として学ランを着こむ女子が増えている。東京六大学リーグなどのスタンドでも、学ラン姿で声を張り上げ、エールを切る女子応援部員の姿が目立っており、学ランはもはや男性だけのコスチュームではない。

 二松学舎大付(東京)は大会初日の第1試合で、柳ヶ浦(大分)に3-2と競り勝った。三塁側のアルプス席で応援をリードしていたのが、応援同好会の部員5人で、内訳は男子3人、女子2人。部長を務めているのは、女性の鎌ゆり奈さん(3年)だ。顧問の千葉儀胤教諭は「同好会とはいえ数十年の歴史があり、特に最近20年ほどは女子が結構多い。4年前には部員4人全員が女子でした」と紹介する。

 部長の鎌さんは「初めて甲子園のスタンドに来て、すごく広いなと感じていますし、私たちも緊張しています。都大会では選手名や演奏する曲名をスケッチブックに書いて、観客の皆さんをリードしていましたが、甲子園のスタンドには小さすぎるので、大きめのボードをつくり直しました」と明かす。「初めて球場の雰囲気に触れた時の感動は、今も覚えています。同年代の野球部員たちが勝った時のうれしさは最高です」と笑みを浮かべた。

 昭和の中高生は、男子が学ラン、女子はセーラー服が定番だったが、鎌さんは「応援する時のユニホームとして、学ランに違和感は全くありません」と言う。

消えゆく昭和の風景…塩を吹く学ラン、バケツの水をかぶっての応援

 一方、夏になると、二松学舎大付の応援同好会の部員たちが学ランを着ることはない。千葉教諭は「コロナ禍で夏の都大会が空調の効いた東京ドームで行われた時でさえ、学ラン姿で応援していたら、テレビ中継の視聴者から『暑苦しい』と苦情が寄せられたそうです。夏の屋外球場ではとても、学ランを着るわけにはいきません」と説明する。夏には半袖Tシャツと黒のズボンに変わるという。

 かつて夏の高校野球のスタンドでは、汗で塩を吹いた学ランを着こみ、バケツの水をかぶりながらエールを送る応援団の姿が風物詩だった。しかし温暖化などもあり、変わっていくのも当然かもしれない。鎌さんも「夏に学ランでは、さすがに暑すぎるでしょう」と自然体だ。

 それぞれの校風、応援団の伝統などによって違うだろうが、全体的にバンカラとはほど遠く、汗臭さを感じさせない応援風景が増えているのは間違いない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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