山本由伸の変わらぬ「優しさ」 宮城大弥が驚いた気遣い…日本凱旋で予期せぬ申し出

ドジャース・山本由伸(左)とオリックス・宮城大弥【写真:THE ANSWER/中戸川知世、小林靖】
ドジャース・山本由伸(左)とオリックス・宮城大弥【写真:THE ANSWER/中戸川知世、小林靖】

山本由伸は「宮城大弥基金」で野球を続ける子どもたちを東京開幕戦に招待

 オリックスの宮城大弥投手が、ドジャース・山本由伸投手が「一般社団法人 宮城大弥基金」で野球を続ける子どもたちを凱旋登板の試合に招待したことを受け、支援の継続を改めて誓った。

「ヨシノブさんの優しさは変わりませんね。僕は、僕の形でこれからも支援を続けていこうと思っています」。宮城が表情を引き締めた。山本は、3月18日に東京ドームで行われた「MLB 東京シリーズ by Guggenheim」のカブス-ドジャース戦に、宮城大弥基金の支援を受け野球を続けている子どもら10人を招待した。

 きっかけは3月7、8日ごろ、山本から入ったラインのメッセージだった。「開幕戦のチケットが10枚あるので、基金の子どもたちを招待したい」という内容。すぐに電話で連絡を取った宮城だが、基金のことを山本が覚えていて行動に移してくれたことに、驚きとうれしさが込み上げてきたという。

 基金は、経済的な理由で野球を続けることに苦労した宮城の経験をもとに、父の享さんと立ち上げ、2022年12月から本格的な活動を始めた。同じような境遇の沖縄の子どもたちが野球を断念することがないよう、未就学児から高校生までを対象に活動を支援している。

 一般からの寄付のほか、宮城の奪三振数1個につき1万円やアンバサダーを務めるスポーツメーカー「ミズノ」の契約金などが活動の原資。沖縄県本部町の菓子店「誠もち店」が、スポーツ選手の栄養補給を目的とした「アスリートもち」の売り上げの一部を寄付するなど、将来のアスリートを支援する輪が広がりを見せている。

宮城「いつも通りかな、と。優しさは変わんないな、と思いました」

 3人からスタートした支援は現在、4月に中学に進学する子どもから高校生まで10人(女子1人)に増えた。山本とこれまで基金の話はしたことはないという。「基金がスタートした時にはオリックスにいらっしゃいましたから、メディアを通して基金のことは知っていたと思いますが、基金のことを話したこともありませんし、これまで何かお願いをしたこともありません」。

「いつも通りかな、と。優しさは変わんないな、と思いました」と宮城。チケットだけでなくホテルも手配し、たくさんのグッズの中にお土産代にと、商品券も忍ばせてくれた先輩。一行の航空券や空港での案内までしてくれた全日空も、山本の思いを聞いて協力を申し出てくれた。チームを離れてメジャーに挑戦している山本が、遠く離れた地で基金のことを覚えていてくれて、支援活動に協力してくれるということへの感謝の思いは尽きない。

 山本の、他を思いやる気持ちはオリックス時代から変わらない。2022年育成ドラフト4位で四国アイランドリーグPlusの徳島インディゴソックスから入団し、開幕直前に支配下登録された茶野篤政外野手には「どこのメーカーでもいいから、用具を注文していいよ」と、用具提供を申し出たことがある。ただ、期間は1年間。年俸の安い間には費用の負担が大きいバットなどを気にせず練習に打ち込めという激励ともに、1年間で力をつけて年俸を上げるんだぞ、という思いが込められていた。

 3年目を迎えた基金。宮城は、今後の支援については柔軟な考えだ。「僕も試合に招待することも考えています。でも、試合を見てもらうのにもいろんな費用がかかります。それを道具の購入に充てたらとも思いますし、支援する子どもを増やすことに使うのがいいという考えもあります。そのあたりは考えてやっていけたらいいなと思っています」。

 活動を継続するためにも、自身が輝き続けなければならない。山本から引き継いだエースナンバー「18」を背負って上がる2年連続のチーム開幕戦のマウンドで、子どもたちに躍動する姿を見せる。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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