背水の陣7年目、根尾昂の育成方針を“疑問視” 元中日監督が球団に苦言「反省はするべき」

中日・根尾昂【写真:栗木一考】
中日・根尾昂【写真:栗木一考】

森氏「最初は投手でいって、ダメだったら野手になると思っていた」

 井上一樹新監督を迎えた中日は今季、ドラフト1位入団した金丸夢斗投手や同2位の吉田聖弥投手、また強肩が高く評価される同4位の石伊雄太捕手ら、活きのいい新人選手たちが注目を集めている。その陰で、今季こその1軍定着を目指すのが、中継ぎ右腕の根尾昂投手だ。入団当初は“二刀流”と騒がれたドラ1選手について、元中日監督で現在は解説を務める森繁和氏は「(球団の起用方針に)一貫性はなかったのか、反省は当然するべき」と話す。

 打ってよし、投げてよし、走ってよし。走攻守3拍子が揃った上に、学業も成績優秀。大阪桐蔭が甲子園春夏連覇を達成する立役者となった甲子園のスターは、2019年春、鳴り物入りで中日の門を叩いた。東海地方の岐阜県出身。ファンの期待が大きく膨らんだのも無理はない。

 2018年10月25日に行われたドラフト会議で4球団競合の末に交渉権を引き当てたのは、その10日前に監督就任が決まった与田剛氏だったが、根尾の1位指名を公表したのは2018年まで指揮を執った森氏だった。

「オーナー命令だから『1位は根尾でいきます』と言ったけど、入ってからのことは分からない。ただ、最初は投手でいって、ダメだったら野手になると思ったんだよね。練習の種類や量を考えると、投手から野手は転向しやすいから。そうしたら、本人が『ショートでやりたい』って球団にもメディアにも言った。あれだけの選手だったら、本人が言ったことは優先されますよ。それで結果が出なくて、次の(立浪和義)監督が「じゃあ投手で」となれば、その声もまた優先されるでしょう」

 遊撃手としてプロ生活をスタートさせたが、1年目は怪我がちで1軍出場は2試合。オフには外野にも挑戦し、3年目には主に外野手として1軍で72試合に出場。だが、打率.178と奮わなかった。立浪監督となった2022年は野手と投手の二刀流となり、2023年から投手に専念。先発ローテ入りを目指したがうまくハマらず、今季は中継ぎとして2軍で調整を続ける。

配置転換を繰り返して7年目「そろそろファンも諦めムードになる」

 高校野球での印象が強い根尾だが、今季ではや7年目。プロとしてのキャリアは若手から中堅への移行期に差し掛かってきた。何をやってもそつなくこなす能力を持ちながら、開花しきれないもどかしさを感じているのは、本人だけではなくファンも同じだろう。森氏は「最終的には結果を出せていない本人が悪いと言えば悪いんだけど……」と続けた。

「(配置を)グルグル回していたら7年経ってしまった。監督やコーチの交代がある中で、球団として(起用方針に)一貫性はなかったのか、反省は当然するべきかなと思いますね。セ・リーグの場合、本当に二刀流ができるかというと難しい。その中でショート、レフト、先発、中継ぎ……7年経ったら、そろそろファンも『どうなってるんだ』と諦めムードにもなりますよ」

 今季はまだ、根尾と直接会話するチャンスはないという森氏だが、野球に対して真摯に取り組む姿勢は「何をやっても真剣だし、真面目。だから、ファンも期待したくなってしまう」と高く評価。「態度が悪いとか、野球に取り組む姿勢が悪いとかいうのであれば、もう仕方ないんだけど」と話す。

 まずは今季、中継ぎとして結果を出せるよう全力を尽くすことが求められる。その一方で、根尾の将来を考えた時に球団が判断しなければならないこともあるという。

「まずは、今もらったチャンスをものにする。それができなかったら、何が足りないかを自分で把握して次に向かう。結果が出ないということは、何かが足りなかったり、違ったりするから。1つでも結果が出た時に自信が生まれ、大きな進歩に繋がると思います。それを引き出すのがコーチの仕事。何かの拍子にコロッと変わる可能性はあるから。そう考えると、チームを変えるのも1つの手。細川(成也)がいい例ですよ。チームが変わることを本人がどう感じ、どう解釈するか。根尾には頑張ってもらいたいから」

 勝負の年を迎えた根尾の奮闘に期待したい。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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