猛練習も「リハビリと比べたら幸せ」 “万全”で挑む3年目…オリ・内藤鵬の現在地

オリ・内藤鵬が連日の猛練習に励んでいる
水のように打つ――。オリックスの3年目、内藤鵬内野手が上半身の力を抜いた新打法で、打撃を磨いている。
「下半身は固くして力を秘め、上半身は水のように柔らかく打つように心がけています」。内藤が、春季キャンプで真っ黒に日焼けした顔をほころばせた。
日本航空石川高時代に通算53本塁打を放ち、スケールの大きい内野手として2022年ドラフト2位で入団。将来の大砲候補として嘱望されたが、けがに泣いた2年間だった。1年目は5月のウエスタン・リーグで相手野手と交錯して左ひざを負傷。左膝鏡視下外側半月板縫合手術を受け、10月のみやざきフェニックス・リーグで実戦復帰したが、昨年の春季キャンプの守備で左肩を脱臼してしまった。
2年連続の大手術で大きく出遅れたプロ生活。3年目のキャンプは「プロに入ってから一番と言えるくらい練習しました」と胸を張った。個別練習では守備の後に打撃練習を行う、B組の居残り練習の常連。午後5時を過ぎても福川将和2軍打撃コーチと汗を流す姿があった。
練習の多くを費やしたのは、ウォーキングロングティーだった。福川コーチが後ずさりをしながら投げるボールを、内藤が前進しながらバットではじき返す。緩急や高低を付け、倒れそうになるまで何度も繰り返した。
「下半身を強化して、足で打つ練習です。だいたい、いいバッターって足を使って打っているんです。下半身は不器用なんですが、パワーがあります。上半身はパワーがないのに器用だからいらんことをしてしまう。上を使い始めると悪い方向にいって不調になるんです。足で打て、足で飛ばせと意識づけています」と福川コーチは狙いを語る。
内藤の当初の打撃を、福川コーチは「最初は足を使えているのですが、いざ打ちに行く時にほどけて(緩んで)しまうように見えたんです」と語る。内藤にも思い当たる節があった。「高校時代に打撃を周りから『柔らかい』と言われていたんですが、それだったんですね。何も意識はしていなかったんですが。けがをして、どんどん打ち方が固くなってしまっていたと気付かされました」という。
内藤の両方の手の平は、マメで痛々しいほど。「毎日、痛い手でバットを振っています。痛くない時はないです。練習はきついですけれど、リハビリと比べたら幸せです」。3月4日から始まった春季教育リーグでは、初戦の阪神戦で「4番・三塁」で出場し、走者を置いた打席で犠飛と中前適時打で3打数1安打、2打点。同リーグでは出場3試合で10打数4安打、2打点と好スタートを切った。練習ができて、野球ができる喜びがバットを振る原動力になっている。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)

