42歳・上野由岐子が現役を続けるワケ いまだ無双…「25枚」の自信がもたらす“進化”

取材に応じたビックカメラ高崎・上野由岐子【写真:橋本健吾】
取材に応じたビックカメラ高崎・上野由岐子【写真:橋本健吾】

42歳で25シーズン目を迎える女子ソフトボール界のレジェンド・上野由岐子

 プロ野球が開幕し熱戦を繰り広げる中、世界最高峰の女子ソフトボールリーグ「ニトリJDリーグ」が12日に開幕する。注目は25シーズン目を迎える上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)だ。42歳のレジェンドがFull-Countの単独インタビューに応じ、現役を続ける理由を激白した。【前編】

 多くのアスリートは、年齢による体力の衰えで現役引退していく。だが、上野はそれを感じさせない。2022年は前年オフに受けた左膝手術の影響もあり全休。引退危機も囁かれる中、40歳で迎えた2023年はリリーフで20試合に登板した。昨年は先発、救援で15試合に登板し6勝1敗、防御率0.53とフル回転し、復活を果たした。今年7月に43歳を迎える右腕は今まで以上に開幕を心待ちにしている。

「去年ぐらいから逆にコンディショニングが良くなってきた感覚があります。そういった意味では25年目を迎えるシーズンに楽しみを感じている。進化というか、やりたいことをやれている。その手応えが楽しくて、モチベーションにも繋がっています。開幕に向けてワクワクする、ソフトボールのやりがいを感じている」

 五輪や世界選手権などを含め、常に周囲の期待を上回る活躍を見せてきた。ただ、昨今はデータ分析も進み、“勢い”だけでは通用しない時代にもなっている。実力と結果、そして圧倒的な経験値で数々の修羅場を潜り抜けてきた右腕も常に進化を求めている。

「自分自身のピッチングスタイルをどんどん変化させたい。『上野さんは本当に衰えないよね』って周りに思わせたい。そのためには自分が変わっていかないといけない。現状維持ではいけないかなと。去年、結果が出たからといって今年も同じスタイルで結果を出すのか。違ったものにトライして結果を出していく。そういうことをやっていきたい」

フラストレーションを抱えた30代…40代で「一新された感覚がある」

 現状維持は後退と同じ――。多くの選手が口にする言葉だ。常に進化し、誰もが近づくことのできない領域を目指していくのが一流のアスリート。ただ、一度築き上げたものを失う可能性もある。体重やフォームの変化など、わずかな“誤差”が原因で本来の力を取り戻せず消えていく選手も数多くいる。上野にそうした怖さはないのか。

「私の場合はうまくいっていたことを捨てるわけじゃない。それにどれだけプラスアルファを上乗せさせていけるか。それが私には24年分ある。今年は25枚分の1枚を引くようなイメージです。今まで怪我とかもあって、自分がやりたくてもやれない。思い通りにいかないフラストレーションをずっと抱えながらやっていたシーズンが多かった。30代をこえてからは特に多かった。

 40代になって、そういうものが払拭された。やりたいことをやれる考え方、心、メンタリティ。一新された感覚がある。“ニュー上野”のスタイルをこれから作れるのかなと。ワクワク、楽しみが大きい。実際、全てがうまくいかないこともありますが、失敗やうまくいかないことも楽しんでいきたい」

 どのスポーツにも世代交代というのは必ず訪れる。若手の突き上げ、脂が乗り切った中堅らとのチーム内での競争は毎年のように続く。42歳の大ベテランは現状をどう見ているのか。

「年齢は年々、ネタにしてます(笑)。でも、若い子と何かを比較することはほとんどないです。若い選手よりもできることもあるし、できないこともある。私ができないことは皆がやる、皆ができないことを私がやる。だから、私も皆ができるなら『やってよ! やれることはやって。やれないことはやってあげる』という感じです。ただ、選手として1年でも長くやりたい思いは捨ててはいません」

 東西に分かれ16チームが戦う「ニトリJDリーグ」は12日に開幕する。女子ソフトボールを支え続ける上野が、万全の状態で迎える今シーズン、どのようなピッチングを見せるのか注目だ。後編は、46歳で迎える2028年のロサンゼルス五輪、日本代表、そして次世代のエース・後藤希友投手(戸田中央)について語る。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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