元女子代表が魅せられた“手打ち野球” 男女の垣根を越え…どこでもできる競技の強み

Baseball5ユース日本代表コーチを務める六角彩子さん【写真:小池義弘】
Baseball5ユース日本代表コーチを務める六角彩子さん【写真:小池義弘】

女子W杯4度出場の六角彩子さんが4月19、20日にBaseball5国際親善イベント開催

 ボール1つで、どこでも楽しめる――。野球型のアーバン(都市型)スポーツとして、世界的に広がりを見せている『Baseball5』。日本国内でも、国際交流を深めながら競技力の向上を図るなど、さらなる普及活動が行われている。19日から2日間、埼玉県加須市で開催されたのが『SANKO presents Baseball5 FRIENDLY GAMES in Kazo』。そのイベントの中心を担ったのが、侍ジャパン女子代表として輝かしいキャリアを持ち、現在は同Baseball5ユース日本代表コーチを務める六角彩子さんだ。

 手打ち野球の進化版であるBaseball5は、バットもグローブも使わない。1チーム5人(男子2人、女子2人、残りの1人は男女どちらでも可)で構成されて挑む試合は5イニング制。3アウトで攻守交代という点は野球と同じだ。打者は、前方から投げるボールを打つのではなく、自らがトスしたボールを打つ。そこは一般的に知られる手打ち野球と違うのだが、野球の要素がふんだんにありながら、少人数で男女混合、そして広いスペースを必要としないため、場所を選ばず手軽に楽しめるスポーツだ。

 2010年の第4回IBAF女子ワールドカップでは大会MVPと首位打者を獲得、その後も女子代表の中心選手として活躍を続けた六角さんにとって、Baseball5との出会いは刺激的だった。

「2019年にBaseball5が日本にやってきたタイミングで、実際に講習会に行って、すごく面白いなと思いました」

元女子代表が魅せられたBaseball5の競技性「面白いんです」

 茨城県日立市に生まれ育ち、兄の影響で小学校低学年から野球やソフトボールに親しんだ。4年生になると地元にあるリトルリーグのチームに入り、中学校では軟式野球に夢中になった。埼玉栄高では女子硬式野球部に所属。「もっと野球がやりたい」と女子硬式野球クラブチームの侍でプレーする傍ら、帝京平成大に進んで理学療法士の資格を取得した。

 2020年に埼玉西武ライオンズ・レディースへ移籍し、初代メンバーとして活躍した後、2024年からは同年に発足した茨城ゴールデンゴールズでプレーを続ける。一方で、Baseball5のけん引役として国際大会に出場しながら、普及活動にも尽力するのだ。

「Baseball5は男女が同じフィールドにいなくてはいけないルールがあります。プレーするフィールドは狭く、ホームランを打てばいいというものでもない。そういった競技性が、面白いんです」

 野球のようなスポーツを「男女隔てなく楽しめるのがいい」とも語る。自らは「2つの競技を一緒に頑張りたい」と、野球とBaseball5の両方を追い続けていきたいと言う。

誰でも、どこでもできるスポーツを「多くの人に知ってほしい」

 WBSC公認インストラクターとして海外でのBaseball5普及活動にも携わってきたが、世界を見続けることで“野球観”が変わった。

「日本での野球はみんなが知っているスポーツですけど、海外へ行くと『野球って何?』というくらいに見たことがない、ルールを知らないところもあります。カルチャーショックを受けましたね」

 その中で芽生えた普及への思い。六角さんが言葉が足す。

「Baseball5は、野球とルールも似ているところがあります。ダイヤモンド型スポーツってこんなに面白いんだということを多くの人に知ってもらって、そこからもっとダイナミックにやりたいという人は野球やソフトボールに進んでもらってもいいと思います」

「キッチンマット」がつないだ日用品メーカーとの縁

 新しいものにチャレンジすることが「好き」だと笑う六角さんは、今年から日用品メーカーのサンコーとタッグを組む。きっかけは、普段の生活で使用するキッチンマットだった。

 体育館などの室内でBaseball5を行う時は、床に置いたベースがすぐにズレてしまうことが課題だった。そこで六角さんはサンコー製のキッチンマットをベース型に切り貼りし、薄くて滑らない代用品として活用。さらには、自らサンコーに連絡して商品化を提案するという、“飛び込み営業”もした。野球やBaseball5に対する六角さんの思いに触れたサンコーは、様々な形でのサポートを約束。一緒に新たな野球関連の商品開発も進めているのだという。

 サンコーの協賛を受けた今回のイベントは、トップ選手がそろうフランスチームも参加して盛り上がった。「誰でもできる、どこでもできるというものを、これからも表現していきたい」と、日本初の「車いすBaseball5」も実施。まずは新たなルール作りから始め、Baseball5が持つユニバーサルスポーツとしての可能性が広がることを期待する。

 現役女子野球選手としてプレーする一方で、Baseball5ユース日本代表コーチを務める六角さんは、Baseball5の未来図をこう語る。

「Baseball5を知っている人、そして競技人口は少しずつ増えていますが、もっと多くの方に知ってほしいですね。日本代表チームの選手たちは、世界一を目指してやっています」

 その魅力を誰よりも知るBaseball5の第一人者は、競技力を高めながら、日本国内で確かな“文化”となっていくことを願っている。

(佐々木亨 / Toru Sasaki)

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