敢えて小石散乱「イレギュラーという言葉をなくす」 筒香兄弟が育む“打球対応力”

アラボーイズ代表の筒香裕史氏【写真:伊藤賢汰】
アラボーイズ代表の筒香裕史氏【写真:伊藤賢汰】

DeNA・筒香嘉智が設立…「和歌山橋本Atta boys」で代表を務める兄・裕史さん

 令和の時代でも不変。野球の基礎が身につく練習の1つが“壁当て”だ。DeNA・筒香嘉智外野手が故郷の和歌山に設立した少年硬式野球チーム「和歌山橋本Atta boys(アラボーイズ)」では、スケールの大きい選手育成を目指している。代表を務める兄・裕史さんは「どんな状況でも対応できる能力をつけてほしい」と口にする。

 アラボーイズが使用するグラウンドはメジャーのスプリングキャンプを彷彿とさせる。豪華な設備の中でひときわ目立つのが、ライト付近の小道に存在する昔ながらのコンクリート壁だ。子どもたちは壁に向かって全力投球し、「投球と捕球」の感覚を習得していく。ただ、地面はあえて整地しておらず、小石などが散乱している。

 アラボーイズでは技術に加え、選手の身体能力向上に力を注いでいる。影響を受けたのは2015年に訪れたドミニカ共和国の野球文化。砂利道を裸足で歩いたり、整地されていないグラウンドで球遊びしたり、決して恵まれた環境とは言えない中で、遊びながら成長する子どもたちに衝撃を受けたという。

 整地されていない地面での“壁当て”には様々な効果があるという。裕史さんは「全球が(どこに跳ねるか分からない)リアクションボールになる。試合のなかでは予測しない打球もたくさん飛んできます。イレギュラーのゴロは捕れなくて“しょうがない”と思ってほしくないですね」と、意図を説明する。

 投球のスピードに強弱を付ければゴロの勢いは変わり、予測不能の打球を体感できる。さらに2人一組となり、ゴロが捕れなかったら負けなどとゲーム性を持たせれば、子どもたちは必死になりボールを追いかける。綺麗なグラウンドでの練習も大事だが、試合を行うグラウンド状況は全て同じではない。

壁当てをする選手たち【写真:伊藤賢汰】
壁当てをする選手たち【写真:伊藤賢汰】

 マウンドの高低差、雨でぬかるんだ地面、天然・人工芝のグラウンドーー。「一番、強いのはイレギュラーという言葉をなくすこと。それが当たり前になれば不規則な打球にも対応する術を覚えていくと思う」。どんな環境でも自分の力を100%出せるようにしてほしいという裕史さんの思いが、アラボーイズの練習には詰め込まれている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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