首位打者快走も「まだよくなれる」 本調子でなくても…太田椋が語る打撃哲学と進化の兆し

初の月間MVP、開幕ダッシュ成功に貢献
好調な打撃でチームをけん引する太田椋内野手。初めて3月・4月の大樹生命月間最優秀選手(MVP)に輝いた若武者は、開幕直後から打撃がもっと上向くことを予想していた。
「まだまだ、もうちょっとよくなれると思います、感覚的に」。太田が困惑気味に語ったのは、開幕カードの楽天戦(京セラドーム)を打率5割で終えた3月30日の試合後だった。
このカードで太田は、初戦の第1打席で先頭打者本塁打を放つなど、15打数5安打、4打点。3戦目には4安打の固め打ちで、チームの開幕ダッシュに貢献した。
それでも表情がさえなかったのは、本調子ではなかったからだという。「正直言って、あまり調子がよくないのにヒットが出ている状態やったんです。ただ、打てるボールを打っているだけ。打撃練習から、そんなによくなかったんです」と明かす。
太田がバッティングで重視するのは、打撃練習。センター中心に低く強い打球を打って、感覚を研ぎ澄ませる。「僕は、打撃練習(の内容)が結構、試合に反映されるタイプなんです」という太田にとって、開幕カードの結果は本来の打撃を反映しているものではなかった。だからこそ、「まだまだ、よくなる」という言葉が口を突いたのだった。
「仙台での(楽天戦、4月11日から)の1試合目からバッティング練習が、メッチャよくなったんです」という言葉通り、3、4月の27試合のうち、安打の出なかったのは4試合のみ。マルチ安打は半数以上の14試合でマークした。
同じチームでアシスタントスタッフとして打撃投手を務める父、暁さんは近鉄バファローズに1988年ドラフト6位で入団した内野手。自主トレでは練習の手伝いをしてもらうが、太田によれば野球の話はしない。「ビジターで登板機会がない時、ティーのボールを置いてもらうことがあるんですが、『よう打ってるなぁ』と言ってくれるくらいです」という。
これまで、度重なるけがで結果を出せなかった打撃が、プロ7年目で開花した。目指すタイトルは「リーグの1番の選手が選ばれるから」というベストナイン。首位打者のタイトルには「まだ、1か月。数字を追ってそこを見過ぎると、落ちた時に焦る自分がいると思うので、そこは気にせずに」。自然体で打てる球を逃さず、安打を積み重ねる。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)