巨人移籍でリチャードは覚醒するか? 専門家が分析…佐藤輝明にも共通する“傾向”

1対2のトレードでソフトバンクから移籍「チームにとって1番丸く収まる形」
巨人の主砲・岡本和真内野手が左肘を痛めて戦線離脱してから約2週間がたった。岡本は6日、東京ドームで行われた阪神戦の初回の一塁守備で打者走者と交錯。左肘を痛めて翌7日に出場選手登録を抹消され、長期離脱の可能性が高くなっている。チームは6日以降4勝7敗(19日現在、以下同)で勢いにブレーキがかかった格好だ。岡本の穴を埋める“救世主”になりうるのは誰か――。
まず期待されるのは、岡本の負傷をうけ、12日に秋広優人内野手、大江竜聖投手との1対2のトレードでソフトバンクから移籍したリチャード内野手だろう。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「リチャードが覚醒して、ファーストかサードのポジションで常時出場してくれることが、チームにとって一番丸く収まる形だと思います。覚醒につながりそうな兆しもあります」と話す。
リチャードは移籍後初戦となった13日・広島戦(マツダスタジアム)の第2打席で早速、左腕・森翔平投手から左中間へ1号ソロ。さらに18日、東京ドームで行われた中日戦の5回、2死一、三塁のチャンスに左腕・松葉貴大投手に対し代打で起用された。初球は外角低めのチェンジアップを空振りしたが、2球目のスプリットが真ん中に低めに来たところを逃さなかった。打球は右中間席に飛び込む特大の2号3ランとなり、阿部慎之助監督は采配的中に満面笑みを浮かべた。
野口氏は「リチャードにはもともと、レフトからライトまでどこへでも放り込めるパワーがあります。この2号3ランをいいきっかけにして、引っ張りにかからず、センターを中心に打っていく打席が増えれば、自ずと好成績が残せると思います」と分析する。
長距離打者が成長とともに、逆方向への1発を増やす事例は多い。現在11本塁打、33打点でセ・リーグ2冠の阪神・佐藤輝明内野手は、本塁打を右翼へ36.4%(4本)、中堅へ27.3%(3本)、“逆方向”の左翼へ36.4%(4本)と打ち分けている。右翼への本塁打が68.8%(16本中11本)を占めていた昨季とは、大きく違う傾向が表れているのだ。野口氏は「リチャードにも佐藤輝のように、“逆方向”への本塁打に味をしめてほしいです」と語る。
セ・リーグ移籍も有利に働く「甲子園の浜風も右打者には追い風」
パ・リーグからセ・リーグに変わったことも、リチャードに有利に働く可能性がある。「セの球場は、バンテリンドームが広いくらいで、全体的にパより狭い。左打者にとって不利に働く甲子園の浜風も、右打者のリチャードには追い風ですからね」と野口氏は話す。
巨人移籍後、5試合に出場し打率.200(15打数3安打)で2本塁打4打点。3本の安打は全て左投手からだが、今後は、相手先発が左腕のときのスタメン要員や右の代打として、出場機会が増えそうだ。
プロ7年目・24歳の増田陸内野手も、岡本離脱でスタメンに欠かせない選手となった。今季打率.333と結果も出しており、昨季1軍出場がわずか4試合に終わった選手とは思えない。「岡本やリチャードのように本塁打を量産するタイプではありませんが、出塁率(.375)、得点圏打率(.364)も高く、レギュラーの座を固めるチャンスを迎えています」と野口氏はうなずく。
「外野では丸(佳浩外野手)が太ももを痛めて開幕から不在となっていることで、移籍2年目の若林(楽人外野手)が存在感を増し、1軍から外しにくい選手になりました。レギュラー陣の故障を機に、しっかりチャンスをつかむことも、プロの世界で生き抜いていく上で欠かせないことです」と野口氏は強調する。巨人は岡本の離脱を“怪我の功名”として、結果的に戦力を底上げすることができるか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)