キング独走も…佐藤輝明の“唯一の不安” 阪神OBが指摘、最強になるために必要な感覚

現役時代に阪神などで捕手として活躍した野口寿浩氏が分析
■日本ハム 5ー4 阪神(4日・エスコンフィールド)
阪神の佐藤輝明内野手が4日に敵地エスコンフィールドで行われた日本ハム戦で14号ソロ、15号2ランの2本塁打を放ち、40打点と合わせてセ・リーグ打撃2部門トップ。特に本塁打では2位のDeNA・牧秀悟内野手に5本差をつけ、独走態勢を固めつつある。現役時代に日本ハム、阪神を含む4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「このまま行けば、今季が終わる頃には『いつメジャーに行くんだ?』という話になる」と“サトテル”の成長ぶりに目を見張っている。
「1本目なんて、ありえないですよ」。野口氏は“捕手目線”で、そう言ってため息をつく。佐藤輝は4回、カウント2-2から日本ハム先発の左腕・加藤貴之投手の外角低めのカットボールに泳がされながら、右腕1本でバットを伸ばし、球をライト方向へ運ぶ。打球はギリギリでフェンスを越え、観客席に飛び込んだ。「バッテリー目線で強いて言えば、もうボール半個分外に投げたかったところですが、それにしても、まさかフェンスを越えるとは……」と野口氏の感嘆は止まらない。
驚異的なパワーを見せつけた1本目以上に、2本目はある意味で印象的だった。8回2死一塁で、日本ハム4番手の左腕・河野竜生投手が真ん中低めに投じた146キロのストレートを一閃。これもフェンスギリギリではあったが、バックスクリーンの左の中堅席に飛び込んだ。
プロ5年目を迎えた佐藤輝のキャリアハイは、1年目と3年目にマークした24本塁打だが、今季は今のところ40本ペースである。本塁打王争いでは、過去3度戴冠した経験のある巨人・岡本和真内野手が怪我で長期離脱中で、8本塁打で止まっているだけに、初タイトルへ向けて死角が見当たらない状況だ。
今季の佐藤輝の本塁打は、打球方向に昨季までと違いがある。昨季は右翼へ引っ張った1発が68.6%(11本)を占め、中堅はわずか6.3%(1本)、左翼は25%(4本)だった。ところが今季は右翼46.7%(7本)、中堅26.7%(4本)、左翼26.7%(4本)と万遍なく打ち分けている。
万遍なく打ち分ける傾向も「内角に甘く来たら右翼最上段まで飛ばせばいい」
野口氏は「センターの少し左に打ち込んだ2本目のようなホームランに、もっと味をしめてほしいと思います。あれでいいんだ、あそこでもフェンスを越えるんだという感覚をつかめれば、視界が広がった気持ちで打席に立てると思います。そうなれば“サトテル最強”ですよ」と説明。「もちろん、投球が内角の甘い所に来たら今まで通り、ドカンと右翼最上段まで飛ばせばいい。そういうパワーに加えて、今季は対応力が出始めたので、すごいことになるのではないかと感じています」と述懐する。
一抹の不安として「佐藤輝がこれまで毎年必ず、深刻な不振に沈み込む時期があったことに、触れないわけにはいきません」とも。ただ、「センターから左への打球が飛ぶようになった今季の打撃を見ていると、不振に陥った時に役立つ引き出しが増えたのではないか、今年はそこまで長くかからず上昇曲線に乗れるのではないかという気もします」と付け加える。
まずは開幕したばかりのセ・パ交流戦で、パの投手たちを相手にグレードアップした長打力をどれだけ見せつけることになるか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)