ドラフト候補に成長した“和製ジャッジ” 小学生で900グラムバット…屈辱から描く成長曲線

浦和学院・藤井健翔【写真:磯田健太郎】
浦和学院・藤井健翔【写真:磯田健太郎】

憧れはヤンキース主砲…ファンからは“浦学のジャッジ”

 昨秋はひと足早く“冬の時代”に入った浦和学院の強打者・藤井健翔三塁手(3年)が、春の訪れとともに覚醒。春季埼玉大会で本塁打を連発し、3年ぶり18度目の優勝に貢献した。プロ球界注目の大砲は、7月9日に開幕する夏の全国高校野球選手権埼玉大会でも豪打をさく裂させるか――。

 181センチ、96キロの巨漢だが、昨冬は食事制限とランニングに励み、10キロ以上の減量に成功。「みんなと同じメニューですが、自分だけ量を減らしてもらったんです。初めはもっと食べたかったけど、胃が慣れてきたら逆に食べられなくなりました」と言って笑わせた。
 
 小さい頃から打撃力の高いチームを好み、実家のある岡山県倉敷市からそう遠くない智弁和歌山をずっと慕っていた。しかし中学3年の春、浦和学院の森大監督が岡山まで出向いて誘ってくれた。「4強に入った選抜大会を見て自分が追い求めるチームに近かったし、強力打線というのも決め手になりました」と振り返る。
 
 2年生の春に5番・三塁でレギュラーをつかんだが、2試合2安打で長打はなし。夏は登録メンバーから漏れた。昨秋は4番・三塁で復活したものの、4試合で3安打1打点、二塁打1本と振るわなかった。「最低でも打点を稼ぐのが4番の仕事なのにそれもできなかった。秋負けたのは、自分が打撃で貢献できなかったことが大きい」と残念がった。

 最大の武器はパンチ力で打球速度は超高校級だが、これがもろ刃の剣となってミート力が落ちた。

取材に応じた浦和学院・藤井健翔【写真:磯田健太郎】
取材に応じた浦和学院・藤井健翔【写真:磯田健太郎】

夏の大会が間も無く開幕、選抜4強の浦和実の存在が…

「この欠点を改善するため冬は大勢の人に指導していただいたほか、打撃ドリルを実践した効果もあって、春は長打と右方向への打球が増えてきました。長打率の向上も感じるし、成長できているように思います」

 同校OBでオリックスでもプレーした坂本一将コーチや、慶大から明治安田生命でプレーした手銭大コーチ、外部スタッフで古豪・上尾時代は監督、コーチを20年務め、2010年から浦和学院の指導に当たる細田幸夫さん、小川航平トレーナーにスイング軌道などのデータ化を依頼するなど、複数の実績のあるスタッフから指導、アドバイスを受けている。

 打撃ドリルでは右翼への強い打球をテーマに掲げ、ボールを最適に捕らえる位置を習得し、2ストライクと追い込まれてからの打撃練習も反復。努力は結果に表れるものだ。

 春季県大会では3本塁打を記録。さく越え2発の川越東との準決勝では、1本目に左翼席奥のネットに突き刺す大飛球を打ち込んだ。打率も4割を超え、4番らしい活躍ぶりで秋の汚名をきっちり返上した。

 藤井を初めて見た森監督は「でかいなあ」と驚いたが、「大きい割に俊敏性があったので可能性を感じました」と述懐し、「最近頼もしい存在になってきた」と目を細める。
 
 筋トレはしない。小学6年なら650グラムが目安だが、小学生から900グラムのバットをひたすら振り続け、パンチ力を身に付けた。
 
 在学中の目標はふたつ。夏の甲子園初優勝と高卒でのプロ球界入りだ。
 
 巨人の岡本和真と米大リーグ、ヤンキースのアーロン・ジャッジにあこがれる。「30本塁打を続けてきた岡本さんはすごいし、打てなくても応援されるジャッジの人間性に魅力を感じます」と解説した。
 
 もうすぐ夏の埼玉大会が始まる。選抜大会4強の浦和実が最大の好敵手か? 「浦和実は埼玉で一番強いが、そこに勝つことだけを目指したら先はない。明治神宮大会と選抜大会を制した横浜に勝つことをイメージしつつ、その過程で浦和実を圧倒したい」と勝負師の顔付きでこう言った。

 横浜とは春の関東大会準々決勝で激突し、藤井は2安打を放ったが2-3で競り負けた。「残る夢は夏の全国制覇だけ。そこに向かって一層厳しくやっていかないといけない」。力こぶを入れ、自らに言い聞かせた。

【実際の動画】将来性十分の“浦学のジャッジ” 181センチ、96キロ…プロ注目の藤井健翔に密着

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