阪神が勝負を分けた7回の采配「普通のスクイズであれば…」 OBが検証、無得点の背景

ソフトバンク戦で指揮した阪神・藤川球児監督【写真:栗木一考】
ソフトバンク戦で指揮した阪神・藤川球児監督【写真:栗木一考】

1点ビハインドの7回1死一、三塁で坂本のカウントは3-0

■ソフトバンク 3ー1 阪神(22日・甲子園)

 就任1年目の藤川球児監督率いる阪神は22日、本拠地・甲子園球場で行われたソフトバンク戦に1-3で惜敗。ソフトバンクの6年ぶり9回目のセ・パ交流戦優勝が決まった一方で、阪神は今季交流戦全日程を8勝10敗で終えた。競り合いの中、阪神が7回の攻撃で取った作戦が明暗を分けた。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が“検証”する。

 阪神は1-2の1点ビハインドで迎えた7回の攻撃で、この回から登板したソフトバンク4番手の右腕・松本裕樹投手を攻め、無死一、三塁の絶好機をつくった。そして小幡竜平内野手が浅い左飛に倒れ、1死となると、藤川監督は三塁走者の主砲・大山悠輔内野手に代走・熊谷敬宥内野手を送り勝負に出た。“何が何でも同点に追いつく”という執念が、この采配からはっきり見て取れた。

 打席に立った坂本誠志郎捕手は、3球連続でバントの構えからボール球を見極め、カウントは3-0となる。運命の4球目。坂本は真ん中低めに来た152キロのストレートをセーフティスクイズ。打球は目の前で弾み、高いバウンドとなり、海野隆司捕手が前に出て捕球する。三塁走者は動けず、海野は一塁へ送球し2死目をゲットした。阪神は一塁走者を二塁に進めただけ。次打者の代打・糸原健斗内野手も中飛に倒れ、結局この回無得点に終わった。ここで同点に追いつけなかったのは、試合の流れの中で痛恨だった。

 いろいろな作戦が考えられる場面だったが、野口氏は「あくまで僕の考えですが……」とした上で、「僕がサインを出す立場だったら、あそこはセーフティではなく、普通のスクイズのサインを出し、三塁走者に(投球と同時に)スタートを切らせます」と言い切る。

「カウント3-0でしたから、相手バッテリーは次の球をボールゾーンへ外そうとはならない。もし四球で歩かせるつもりなら、申告敬遠があるので、そうしていたはず。捕手が座った以上、絶対ストライクゾーンに来ると考えていいと思います。相手の松本は長年セットアッパーとして経験を積んできた投手ですから、手元が狂ってバントができないほどのボール球になる可能性も極めて低かったと思います」と野口氏は状況を説明する。

2位に2.5ゲーム差の首位で交流戦突入→2つ黒星先行もゲーム差は広がった

 一方、「カウント3-0でセーフティスクイズを命じられた打者の心理を考えると、ボール球は見逃さなければならない。しっかり選球しなければならない分、タイミングが遅れ、ああいう格好になりやすいのですよ」と指摘。「普通のスクイズであれば、どんな球でもやらなきゃいけないので開き直れる。腹を括れる分、うまくいったのではないかと思うのです」と分析するのだ。さらに「そもそも、三塁走者がスタートを切っていれば、あの打球でもホームインできていたと思います」と付け加えた。

 阪神は交流戦優勝のソフトバンクに対し、この3連戦で1勝2敗。計5得点・5失点と互角で、作戦1つが勝敗を分ける展開だった。

 セ・リーグ首位に立つ阪神は、2位に2.5ゲーム差をつけて交流戦に突入し、その交流戦で2つ黒星が先行したものの、全セ・リーグ球団の不振に助けられ、2位との差を3.5ゲームに広げた状態でリーグ戦再開を迎えることになった。

「セ・リーグ5位の中日が交流戦で結構いい戦いをしましたし、広島も楽天に勝ち越して、いい形で交流戦を終えた。振るわなかったDeNA打線にも爆発の兆しがあります。リーグ優勝争いは予断を許しません」と野口氏。指揮官の作戦1つ1つが、ますます注目されそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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