今秋ドラフト上位候補も…代表戦でまさかの打率.077 NPBスカウトが語った現在地

大学日本代表・立石正広【写真:加治屋友輝】
大学日本代表・立石正広【写真:加治屋友輝】

日米大学野球では3戦連続4番起用された創価大・立石正広

 今秋ドラフトの目玉が苦しんでいる。第45回日米大学野球選手権大会は11日、新潟市のHARD OFF ECOスタジアム新潟で第3戦が行われ、日本(侍ジャパン大学代表)が2-0で勝利。3戦全勝で3大会連続21回目の優勝を決めた。歓喜の裏で、3戦連続で4番を任されたプロ注目の立石正広内野手(創価大4年)は4打数無安打3三振に終わり「満足していない」と悔しさをにじませた。

 昨年11月の明治神宮大会で、佛教大との1回戦の初回に“逆方向”の右翼席へ先制2ランを放ったのを始め、決勝までの4試合で打率.667(15打数10安打)、2本塁打6打点3盗塁と走攻守にわたり活躍。今年の東京新大学野球春季リーグでもシーズン最多タイ記録の5本塁打を放ち、今秋のドラフトで1位指名が確実視される最注目野手の右のスラッガーだ。

 だが今大会では、ここまでの3試合で計13打数1安打(打率.077)。好調な上位打線の中で1人だけ苦しんでいる。不振の要因について「結果を見れば分かるのですが、打てるはずのストライクの球にも、自分のやりたいスイングができていないです」と分析した。この日の第1打席では米国先発の右腕ダックス・ホイットニー投手(オレゴン州立大1年)に対し、内角高めの152キロの速球に差し込まれて二ゴロに倒れ、その後の3打席は全て三振に終わった。

 ネット裏では連日、プロのスカウト陣が熱視線を注いでいる。立石を追いかけている楽天・井上純アマチュアスカウトは「春季リーグ戦では徹底マークされ、死球を食らうシーンが何度かありました。今大会でも内角を厳しく攻められていて、そのために左腰が開くのが少し早くなり、持ち味である右方向への長打が出にくくなっている気がします」と指摘。それでも「彼は修正能力が高い。初対戦のレベルの高い投手ばかりの今大会は難しい部分がありますが、彼に対する評価は変わりません」と言い切る。

練習に励む大学日本代表・立石正広【写真:加治屋友輝】
練習に励む大学日本代表・立石正広【写真:加治屋友輝】

堀井哲也監督がのぞかせた親心「野球人生のきっかけにしてほしい」

 大会開幕直前の代表合宿では、臨時コーチを務めた巨人OBの高橋由伸氏から、腰の振りに対してバットが遅れる悪癖を修正するドリルを学んだ。立石は「教えてもらったことで、良い感覚も掴めています。練習試合では良かったので、再現性を少しでも高められるように頑張っていきたいです」と気持ちを切り替えようとしている。

 チームの指揮を執る堀井哲也監督(慶大監督)は「全日本の4番ですのでね……今日は苦しんでいましたけれど、状態は上がってきているので、どこかでしっかりと打って欲しいです。彼の野球人生は秋のリーグ戦もありますし、“その先”もありますから、何かのきっかけにしてほしいという気持ちはあります」。“親心”をのぞかせると「まずは全日本の中心バッターとして戦い抜くことを期待します」と背中を押した。

 日本の優勝は決まったが、今大会はまだ第4戦(12日=HARD OFF ECOスタジアム新潟)と第5戦(13日=神宮球場)が残っている。立石は「試合に出させてもらっている以上、全力でプレーをしたいと思っていますし、勝ちに貢献できるように、しっかり自分の力を出したいと思います」と自分を鼓舞する。同世代の米国代表と戦う貴重な機会を、このまま終わらせるつもりはない。

(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)

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