エスピノーザが首元に刻んだ漢字2文字「一番好きな言葉」 日本に忘れぬ感謝…通訳明かす秘話

来日2年目のエスピノーザが忘れぬ日本へのリスペクト
オリックスのアンダーソン・エスピノーザ投手が、「感謝」の想いを持ってプレーを続けている。「日本語で一番好きな言葉が、カンシャなんです」。首の下に彫ったタトゥーの意味を笑顔で説明してくれた。
エスピノーザはベネズエラ出身。2014年にレッドソックスと契約し1Aで経験を重ね、2016年パドレスに移籍した。翌年以降、2度のトミー・ジョン手術(TJ)を経験。コロナ禍による1年を含めて4年間、実戦から遠ざかっていたが、カブスに移籍した2022年にメジャーデビューを果たし、7試合に登板し0勝2敗、防御率5.40。2024年からオリックスの一員となり、1年目は22試合に登板し7勝9敗、防御率2.63と先発ローテの責任を果たした。
優しく親しみやすい性格で、環境になじむ適応能力にも優れ「日本の野球をリスペクトしている」と語る。死球を当てた打者に対して、日本スタイルで帽子を取って頭を下げるのも「僕は今、日本で野球をしているから」と話す。
1年目のオフ、帰国して首の正面下に「感謝」という漢字のタトゥーを入れた。球団の澤村直樹通訳によると、以前からスペイン語で「感謝」に近い言葉が彫ってあり、日本語でも入れたいという思いがあったという。
「(タトゥーは)日本ではちょっと受け入れ難い人もいらっしゃると思いますが、左腕に家族や兄弟らの名前を入れたりしていますので、そこは大事にしています」とエスピノーザ。日本の歴史や文化も勉強し、ファンの感情にも考慮したうえでの判断だ。
感謝の気持ちは、選手会プロデュースの「あなたの夢叶えます presented by Bs選手会」の「エスピノーザ投手と一緒に日本文化を体験したい」とのイベントでもいかんなく発揮された。ファンとチャレンジした書道でかいたのは「感謝」の2文字だった。
2年目ということもあり挨拶などのほか、簡単な会話はできるようになった。練習終了後、口に飲料水を含んだ状態で報道陣の横を通ると、頭を下げて通り過ぎ、飲み干してから踵を返し「オハヨーゴザイマス」と挨拶する律義さもあり、誰からも「エスピー」と親しみを込めて呼ばれている。
今季8試合目で、昨年7月以来の白星を挙げた。この間、16試合連続して勝ち星から見放されたが、腐ることなく練習に取り組んだ。「ちょっと積極的な姿勢を見せていなかった。気を抜いていたわけではないが、いいピッチングができている時、これくらいでいいんだと思っている自分がいた。ストライク先行でしっかりとボールを投げ込むことが大事」と反省の言葉とともに取り組みを振り返った。
勝ちに見放されていた5月、勝ち運で知られる大阪・箕面市の勝尾寺にお参りし「勝ちダルマ」を購入したのも日本通らしい。
1日の西武戦(セルラースタジアム那覇)で3勝目を挙げた際のお立ち台では、「オキナワ、コンバンワ。ミナサンノハクシュガダイスキデス」と日本語で答えたエスピノーザ。「このまま勝ち続けてチームを優勝に導きたい」と奮闘を誓った。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)