宮城大弥は「受け止めてくれた」 厚澤コーチが語る“凱旋登板”の収穫「成長している」

沖縄での西武戦、宮城は7回2失点の熱投
オリックスは、沖縄で1日、2日に開催された西武戦(セルラースタジアム那覇)で2連勝を飾った。西川龍馬外野手、大城滉二内野手が負傷する不運もあったが、延長10回に勝ち越す劇的な試合展開のほか、アンダーソン・エスピノーザ投手や凱旋登板の宮城大弥投手が好投するなど収穫の大きい2日間だった。交流戦後のローテーションを再編して臨んだ厚澤和幸投手コーチに振り返ってもらった。
「よかったです。エスピもよかったし、宮城も。勝たせてあげたかったですが、(宮城は)結果だけではなく、マウンドでの姿や立ち居振る舞いも。プレッシャーもあったと思うんですが、大声援で(スタンドの)みんながメッセージを送ってくれたと思うんです。それを宮城がちゃんと受け止めてくれたのがよかったです」。厚澤コーチが一気に想いを打ち明けた。
一つの賭けだったのかもしれない。首脳陣は6月21日のヤクルト戦(神宮)で4回4失点で降板した宮城の1軍選手登録を抹消し、交流戦後最初のカードとなる楽天戦(京セラドーム)の初戦に、九里亜蓮投手を起用した。「(登板機会などは)戦術とバランス、登板間隔などを総合的に加味して出しています」と話す厚澤コーチだが、5月21日のロッテ戦(京セラドーム)以来、勝ち星から見放されている宮城を心身ともにリフレッシュさせる狙いがあったと思われる。抹消により、自動的に次回登板は最短で沖縄での2戦目になった。
凱旋登板が宮城を奮い立たせ、チームにも勢いをもたらすという狙いは的中した。指笛が鳴りやまない沖縄独特の応援を受け、宮城は躍動し、7回を111球、2失点。5回には不運な打球が連続するなどで無死満塁のピンチを迎えたが、後続の3人を仕留め本塁を踏ませなかった。
「(宮城は)いつものマウンドとは違う雰囲気を感じてくれたと思います。それだけでよかったんです。(選手は)シーズンを戦っていく中で、苦しい登板や悔しい登板があるのですが、みんな次の機会にクリアしてくれています。みんなが成長している姿がいいですね」と厚澤コーチは目を細めた。
アクシデントも「必然だったのかとポジティブに捉える」
2戦目は2‐2の延長10回、来田涼斗外野手の決勝ソロ本塁打などで4点を挙げて西武を突き放し快勝。しかし、試合では小さなアクシデントも相次いだ。
8回に宮城を継いでマウンドに登ったルイス・ぺルドモ投手が、投球練習中に指先の異常で1球も投げずに降板し、山岡泰輔投手が緊急登板。4点リードした10回には才木海翔投手が一度マウンドに上がったが、アンドレス・マチャド投手がコールされそのまま登板した。
「人間がやることなのでミスはあります。怪我だけが心配でしたが、4点差でもマチャドが行くケースはあるんです。だから、最初からマチャドが行くことになっていたのかなと」。ぺルドモ降板についても「あのまま無理に投げて失点すれば、9回は平良(海馬投手)が出てきて終わってしまう可能性もあります。あそこは、山岡で行くべきだったのかなと。導かれているのかなと感じました」と振り返る。
勝負の世界に「たられば」は禁物だが、「必然だったのかとポジティブに捉えています。野球なので、筋書きのないドラマがあるじゃないですか」と厚澤コーチ。沖縄での登板について宮城は「パワーになった」と言い、次戦登板となった9日のソフトバンク戦(京セラドーム)では、8回を112球、被安打3、11奪三振、1失点の好投をみせた。
理屈では説明できない見えない力にも導かれリーグ3連覇、日本一に輝いたオリックスにとって、アクシデントを乗り越え勝ち切っていることは、吉兆なのかもしれない。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)