乗り越えた“チキンハート” オリ・才木海翔が掴んだ初白星「プロ野球選手になれた」

オリックス・才木海翔【写真:冨田成美】
オリックス・才木海翔【写真:冨田成美】

オリ・才木が6月28日の楽天戦でプロ初勝利

 オリックスの育成出身3年目の25歳、才木海翔投手が初勝利を挙げた。ピンチを、ストレートとフォークの2種類で切り抜けるマウンド度胸の良さがウリの右腕だが、マウンドを降りるとチキンハートだという。

「やってやるぞ、という思いしかありませんでした」。ウイニングボールを大事そうに抱え、才木が声を弾ませた。

 マウンドで躍動した。6月28日の楽天戦(京セラドーム)で3‐3の5回2死一、二塁に2番手として登板。オスカー・ゴンザレス外野手を投ゴロに仕留め、ピンチを断った。150㌔のキレのあるストレートを主体に追い込み、最後はウイニングショットのフォークで打ち取った。その裏、打線が3点を挙げ勝ち越し、そのまま逃げ切ったことで白星が転がり込んできたが、才木の好投が打線の奮起を呼んだといっていいだろう。

「マウンド度胸がありますからね」。大事な場面での起用を説明した岸田護監督。ブルペンには中継ぎで実績のある先輩が待機している中で、才木を抜擢したのは打者に向かっていく姿勢を買ったためでもある。

 1年目のオフ、当時2軍投手コーチだった岸田監督と、台湾のウインターリーグに参加した。直球を狙ってくる打者に対して最速155㌔で抑え、10試合に登板し10イニングで15奪三振、防御率0.00と無双のピッチングを披露し、2年目の支配下に結び付けた。

 マウンドでの度胸とは対照的に、チキンハートだという。私生活では、「悪い結果だと気にしてしまうから」と、初詣のおみくじは引かない。1軍1年目の昨季のブルペンでは、緊張感が高まって落ち着けずアンドレス・マチャド投手からリラックスするように呼吸を整える方法を伝授されることもあった。

 それでも、中継ぎの仕事にはやりがいを感じている。先発起用されたこともあったが、昨秋のキャンプでの厚澤和幸投手コーチとの面談で「自分の性格に合っているので、中継ぎをやらせてください」と直訴したほどだ。

「細心だからこそ、大胆に攻めることができると思います」と才木。マウンドでは違う自分を演じることで、投球に集中することができるということのようだ。

 昨オフからのテーマは「自分から逃げない」。ウエートトレーニングやランニングなど単調な基本的練習を、手を抜かず愚直にこなした。開幕からすごした2軍では、フォームを修正しセットポジションからでも球速154㌔をマークし、いつ呼ばれてもいいように準備を重ねた。

 「中継ぎなので白星を目標にはしてきませんでしたが、やっとプロ野球選手になれた気分です。投げる場所をいただいているんで、自分は腕を振るだけです」。V奪還を目指すチームに貢献し続けることを誓う。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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