「僕は智之の野球を1番か2番に知っている」 原辰徳氏が米観戦…再会で語った“甥”のこと【マイ・メジャー・ノート】

Full-Countの単独取材に応じた原辰徳氏【写真:木崎英夫】
Full-Countの単独取材に応じた原辰徳氏【写真:木崎英夫】

原辰徳氏が大リーガー菅野智之と再会した

 巨人の前監督で、オーナー付特別顧問を務める原辰徳氏がFull-Countの単独取材に応じた。今季、35歳でメジャーに挑戦し実力を発揮している甥の菅野智之投手を応援するため、菅野の両親らとともに米国入り。オールスター戦開催の15日(日本時間16日)前後までの滞在予定で、ニューヨークでのミュージカル鑑賞や熱を入れるゴルフなど自身の充電にも充てる。文化とスポーツを通じて米国の息吹に触れる原氏は、2月以来の再会となった菅野とそして日本野球への思いも紡いだ。【全2回の前編】(取材・構成=木崎英夫)

 選手、コーチ、監督として栄光に満ちた35年間を巨人一筋で過ごした原辰徳氏が、オリオールズの本拠地オリオール・パーク・アット・カムデンヤーズを訪れた。

 8日(同9日)にニューヨークに到着した原氏は、巨人のエースに君臨していた菅野智之投手の9日(同10日)の登板に合わせ、翌朝にアムトラック(米国内の旅客鉄道)でボルチモア入り。しかし、登板の当日は激しい雷雨の予報が出ていたため試合は開始1時間半前に中止が決定。原氏は延泊して10日のダブルヘッダー第2試合にスライド登板となった菅野の雄姿を心待ちにしていた。

巨人時代、握手を交わす原辰徳氏(左)と菅野智之【写真:矢口亨】
巨人時代、握手を交わす原辰徳氏(左)と菅野智之【写真:矢口亨】

登板前日の両親らとの食事には同席せず…守ったルーティン

 焼けした顔がほころんだ。

「前日に少し会うことができました。とても元気そうでした。ここまではテレビで登板を見てましたけど、堂々と投げていますよね、本当。ジャイアンツの時代がそうでないとは言いませんが、多少、守っていた部分があった気がしないでもない。でも今は、新鮮に野球選手としてまた新たなステージを得たという感じでフレッシュさというものを非常に感じますね」

 雨で試合中止が決定した後、球場内の関係者ルームで原氏は菅野と対面した。かつての恩師とエースは束の間の団らんの時を過ごしたが、ルーティンを守る菅野は両親ら一行との夜の会食には同席せず前半戦最後の登板に万全を期して体調を整えた。
 
 渡米は3月に計画も、原氏は菅野には数か月間知らせなかった。これも、1年目の挑戦者に余計な気を遣わせないための配慮からだった。

「デビュー登板では指がつってしまってね。無念の降板を強いられましたけど、その次の登板で初勝利しました。最初は緊張があったんだろうね。でもよく頑張ってると思います。こっちに来て、彼は新鮮な形で野球に取り組んでいるように見えますね。映画になった『オールドルーキー』という言葉も彼に使われているけど、そういうものをいい意味で感じますね」

 日本時代に磨き上げた錬金術で未知の舞台に立ちはだかる壁をぶち破っていく菅野に「オールドルーキー」の形容はピタリとはまっている。

「智之とは短いラインでもしっかり通じ合えるんです」

 3月30日(同31日)に敵地トロントでメジャーデビューを果たして以降、菅野とはラインを通じて簡単なやり取りを行っていると明かす原氏は、筆者の目をまっすぐに見据えて言った。「僕は智之の野球を1番か2番で知っている人間だと思っています」。

 一昨年(2023年)にはシーズン4勝と低迷したことから投手生命は終わりとも囁かれた菅野。しかし、昨季は15勝3敗で完全復活。その道のりに並走しアドバイスを送り続けた久保康生巡回投手コーチを満を持して招聘したのが原監督だった。「智之とは短いラインでもしっかり通じ合えるんです」とうなずいた原氏は、「彼のおむつを替えたこともありますから」と言い添えると、微笑を湛えた。

 今回の渡米は、「智之の応援が主な目的」とする原氏だが、米球界の事情に精通する関係者と意見交換を交わした。現役時代に衛星中継や自身が出場した日米野球から肌で感じ取った当時と今のメジャーとを比較して、原辰徳氏は何を思ったのか――。【後編へ続く】

○著者プロフィール
木崎英夫(きざき・ひでお)
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続けるベースボールジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。東海大相模高野球部OB。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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