安達了一コーチが貫く本塁での流儀 「そろそろ打ってよ」細やかな配慮が呼んだ主砲の一発

一塁コーチャーでも本塁で迎える理由
オリックスの安達了一・内野守備走塁コーチが、本塁打を放った打者を本塁で迎える儀式を続けている。
「僕がそうやってもらった時にうれしかったですから、本塁で迎えるようにしています」。安達コーチが、当然とばかりに説明した。
昨季まで兼任コーチとしてプレーし、現役時代に通算36本塁打を記録。岸田護監督が就任した今季は内野守備走塁コーチに専念し、試合中は一塁コーチャーとして選手を指導している。
安達コーチが大事にしている一つが、本塁打を放った打者をハイタッチで、本塁で迎えること。一塁を回る打者とタッチして祝福するコーチャーが多く、本塁で打者を迎えるコーチは少ない。
2021年の本塁打王、杉本裕太郎外野手は「本塁で迎えてもらえるのは、めっちゃうれしいです」といい、「どこだったか忘れたんですが、『そろそろハイタッチしたいからホームランを打ってよ』と言われたその日に打ったんですよ」という。
安達コーチは「ちょっとホームランを見てないから、言っただけなんですよ」と言いながらも、“リクエスト”に応えてくれた杉本に目を細めた。
本塁で迎える理由もある。「一塁を回る時に祝福すると、打者が一塁を踏み忘れるケースも考えられるんです。だから、余裕がある場合には一塁でハイタッチをしますが、基本は本塁で迎えます」という。「その配慮は、わかりますね」と杉本も頷く。気持ちよくプレーをしてほしいという安達コーチの思いに、選手が応える。優勝争いを繰り広げる秘密は、こんなところにもある。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)