先輩経由で伝えられた最強クローザーの教え 才木海翔を立ち直らせた“金言”

3年目の才木が初めて敗戦投手に
オリックスで中継ぎとして存在感を示している岩嵜翔投手が、ソフトバンクで日本一に貢献するなど「キング・オブ・クローザー」の異名で知られるデニス・サファテ投手から授かった金言で、救援失敗で傷心の才木海翔投手を立ち直らせた。
「サファテがよく言ってくれてたんですよ。『Tomorrow is a New Day』って。失敗して引きずってしまうのが人間なんですが、リリーフは引きずったらだめだよと。その言葉を伝えただけです」。岩嵜がこともなげに説明をしてくれた。
強いストレートと鋭いフォークで中継ぎとしてアピールを続けてきた3年目の才木が、初めて敗戦投手になったのは、7月29日の西武戦(京セラドーム)だった。2-2で迎えた延長10回、アンドレス・マチャド投手の後を受けてマウンドに登ったが、1死満塁に暴投で決勝点を与えて降板した。
帰り際のロッカーで、岩嵜がかけた言葉が、サファテがよく口にしていた「Tomorrow is a New Day」だった。「森(唯斗投手、現DeNA)や嘉弥真(新也投手、元ソフトバンク)とも仲がよくて、打たれた時なんかに言ってくれていたんです。明日は新しい日だから、新たな気持ちで球場に来いよ、と」
サファテとはソフトバンク時代、2014年から2021年まで8年間、ともにブルペン陣を支えた。2017年には岩嵜がセットアッパーとして72試合に登板し、最優秀中継ぎのタイトルを獲得、サファテは54セーブを挙げて3年連続セーブ王、日本一にも貢献し、リーグと日本シリーズ両方の最優秀選手(MVP)に輝いたほか、外国人選手として初めて正力松太郎賞も受賞した。
「僕はどちらかというと、失敗して考え込んじゃう方なんですが、完全に吹っ切ることが出来なくても違う気持ちで球場に来ることができました」と岩嵜。
才木は2日後の同じカードで、6-2の8回から登板し、2死からタイラー・ネビン外野手に四球を与えたものの、村田怜音内野手をフォークで遊ゴロに仕留め、リベンジを果たした。
「1回点を取られてしまうと、誰しもがズルズルといってしまうものなんです。そこで止められるかどうかは、自分次第だと思います。止めることができたので、またいい方向に行くんじゃないかと思います」。常にキャッチボールの相手を務め、何でも吸収しようとカルガモのように後ろをついて来る才木の成長を、自分のことのように喜んでいる。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)