現役引退から5か月、43歳中島宏之の“現在” 新たな挑戦…家族との大切な日々

サントリードリームマッチで本塁打を放った中島宏之氏【写真:小林靖】
サントリードリームマッチで本塁打を放った中島宏之氏【写真:小林靖】

中島宏之氏、初出場で同点2ラン&2点二塁打

 プロ野球のレジェンドOBたちが2チームに分かれて対戦する「サントリー ドリームマッチ 2025」が4日に東京ドームで行われ、西武や巨人などで活躍した中島宏之氏が豪快な一発を放った。今年3月に現役引退を表明した中島氏は、ザ・プレミアム・モルツの一員として29回目の開催となったシリーズに初めて参加。2点を追う9回に同点2ランを放って最優秀選手に選出された。

 7月上旬にチケットが完売となった今年の「ドリームマッチ」。初参戦の43歳が超満員の東京ドームをどよめかせた。2点を追う9回無死一塁。バットを高く構え、後方に倒すいつものフォームで打席に立つ。カウント0-2からファウルを挟んだ4球目、能見篤史氏の直球をライナーで左中間席に突き刺した。

 二塁を守ると相手の遊撃手・西岡剛氏、三塁手・今江敏晃氏ともハイタッチ。悠々とダイヤモンドを回ってジャンプして生還し、味方から盛大な祝福を受けた。「前の打席で三振していたので、何とか打ち返したいと思っていました。いい感触だったので、ひょっとしたら入るかなと思いました。初めて出場して、こんな賞をもらっていいのかな?」。7回の打席で空振り三振に抑えられた左腕に鮮やかなリベンジ。10連勝中だったチームを敗色濃厚の土壇場で救った。

「グラウンドでプレーするのは気持ちいいです。しかも、これだけたくさんお客さんが入っている中ですから。(現役を)やめたら、そんな機会はないと思っていました。こうやって野球をやれて、打てて良かったなと思います」。6回にも左翼線に痛烈な2点二塁打。かつての本拠地で躍動し、約4か月前まで現役だった力を見せつけ「この中では最近まで野球をやっていたので……すみません」と周囲の先輩たちに“謝罪”した。

「子どもとの時間を大切にしたり、料理を覚えたり」

 2001年から2012年シーズンまで西武で活躍。その後は米球界を経てオリックス、巨人、中日でプレーした。2009年には最多安打のタイトルを獲得するなど通算1928安打を記録。昨オフに戦力外通告を受けた後も現役続行にこだわりを示していたが、今年の3月末に引退を発表した。以降は気持ちを切り替え、野球中心だった生活を見直し「1か月ぐらいはトレーニングはしなかった」という。

「今までなかなか取れなかった子どもとの時間を大切にしたり、料理を覚えたりしています」。最近は定期的に筋力トレーニングを行っているそうだが、家族中心の生活にシフトチェンジ。西武のイベントに参加するなど野球に携わることは続く一方で、「よく誘われるようになったので、ゴルフを練習しています。投げたり走ったりはしてなくて、バットをゴルフクラブに持ち替えてやっていますね」と笑う。

 特別ルールが適用され、9回2死満塁で再び打席に立ったが、山口俊氏の前に二ゴロに倒れてサヨナラ勝利は逃した。それでも出場選手中、最も現役に近い力を発揮して劇的なドローを演出し「久しぶりの刺激でいいなあと思いました。何回も打席を回してくれて楽しかったですね」と満足そうな表情を見せた。

 始まって間もない充電期間は充実。「今は何か新しいことができないか考えています」と前を向く。いずれは指導者としてグラウンドに戻ってくる可能性はある。何より、ファンを熱狂させたユニホーム姿には華がある。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY