オリ育成の陳睦衡が掴んだ手応え ボールの違いに苦戦も…取り戻した武器「投球の幅が広がった」

8月の2軍戦で初先発、台湾出身の育成右腕が順調に成長
オリックスの最速153キロ右腕、育成1年目の陳睦衡(チェン・ムーヘン)投手が、順調に成長を続けている。
「1年目は、自分の体を強化しているので、数字的にはよくないかもしれませんが、空振りを取れるストレートを投げられるようになりました」と陳がちょっぴり胸を張った。
陳は、昨年9月の「第13回 BFA U18アジア選手権」に台湾代表として出場。韓国戦に先発し5回1/3を投げて被安打2、7奪三振、無失点。日本戦では4回を無安打、2奪三振、無失点で6大会ぶりとなる優勝に貢献した。
オリックスと昨年10月に育成契約を結び、11月の秋季キャンプに参加。今年1月からチームに合流している。前半戦はウエスタン・リーグで1試合に登板し1回を投げて被安打2、2奪三振、1四球、無失点。社会人との交流戦には8試合に登板し、19回を投げて被安打15、14奪三振、6失点の成績だった。
後半戦に入ると、7月29日の広島戦(京セラドーム)に3番手として登板。2回を19球で無失点に封じ、一人の走者も許さなかった。8月5日の中日戦(ナゴヤ)では初先発し、4回を91球、被安打5、2失点(自責点1)。スライダーが冴えて4三振を奪った。
「上半身を強化したので体が大きくなって球速が上がってきましたが、コントロールがしにくくなるなど、課題も出てきました」。体重や体脂肪率に変化はないが、筋肉量が2キロ近く増えたことで、シーズン当初は145キロ前後しか出なかったストレートが150キロまで回復。しかし、制球に苦しんでいる現状を明かした。
「車に例えると、エンジンが大きくなった分、馬力は出るようになったのですが、コントロールがしにくくなりました。それで(カウントで)苦しい状況になり、変化球でバットを振らせることができなくなったのが、今、向き合っている課題です」と陳は話す。
ボールの違いもあったという。「台湾より日本のボールの方が大きいので、ちょっと慣れるのに時間がかかってしまいました」と振り返り、入団時に得意としていた武器のフォークは、試合で使えるまで時間を要した。しかし、7月下旬のライブピッチングに登板した際は、フォークで空振りを取る場面が何度もあった。
「これまではスライダーの方がよかったのですが、フォークが決まるようになったので投球の幅が広がっています。ストレートもゾーンで勝負ができるようになってきました。ゾーンに入れることで課題が出てくると思いますが、安定すれば成長できます」と手応えを語る。入団時の自己分析は「気持ちが安定していて揺れないところ」。台湾出身の育成右腕は「徐々にアップしていくタイプなんです」とじっくりと歩みを進めていく。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)