西武助っ人が驚異の「14.11」 打者を圧倒する投球の裏に、日本で改善された“課題”

西武のトレイ・ウィンゲンター(左)とタイラー・ネビン【写真:球団提供】
西武のトレイ・ウィンゲンター(左)とタイラー・ネビン【写真:球団提供】

WHIP0.76が示す安定感、来日後に制球力も向上

 西武は18日、トレイ・ウィンゲンター投手と来季の契約を締結したことを発表した。6月23日にはタイラー・ネビン外野手とも来季以降の契約延長を発表しており、今後の活躍に期待が高まっている。ここでは、2人の助っ人の魅力をデータをもとに紹介する。(数字は全て8月19日時点)

 ウィンゲンターが持つ最大の特長として、37イニングで58奪三振とハイペースで三振を奪っていることが挙げられる。奪三振率も14.11と高い水準にあり、快速球とスライダーでアウトをもぎ取ることができるのは大きな強みだ。MLBでも97試合で通算11.99と高数値を残していた。世界最高峰の舞台で強打者を相手に三振を奪ってきた実力を、日本でも発揮していると言えるだろう。

 それに加えて、与四球率も2.92と一定以上の水準に達しており、制球に苦しんで走者を溜めるケースが少ないのも魅力だ。さらに、三振を四球で割って算出する、制球力や投手としての力量を示す「K/BB」に関しても、一般的に優秀とされる3.50という水準を大きく上回る4.83という数字を残し、投手としての能力の高さを示している。

 ただ、ウィンゲンターのMLBにおけるキャリア平均の与四球率は4.72と、来日前の段階では制球面がやや不安定だったことがうかがえる。NPBへの移籍を機に課題だったコントロールが劇的に改善されたことが、西武での活躍につながっていると考えるのが自然だろう。

 さらに、今季の被打率は.133と痛打を浴びる割合も低い。奪三振の多さに与四球・被安打の少なさといった要素が重なり、1イニングごとに出した走者数の平均を示す「WHIP」も0.76と優秀な水準に達しており、走者を出すこと自体が少なくなっている。

 本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「被BABIP」は.212と、一般的に基準値とされている.300を大きく下回っている。被BABIPは投手自身がコントロールできる部分が少なく、運に左右される要素が大きい指標であると考えられているが、近年は投高打低の影響で、NPB全体の被BABIPが低下傾向にあることには留意すべきだろう。

 まとめると、ウィンゲンターは来日後に制球力を大きく改善させ、四球を出さずに打者と勝負する機会を増やしている。この点がNPB全体の被BABIPの低下と噛み合ったことによって、投球の安定感が飛躍的に高まっていると考えられる。

西武のタイラー・ネビン【写真:小林靖】
西武のタイラー・ネビン【写真:小林靖】

全試合出場の高い貢献度、ネビンの価値を高める数々の指標

 西武の4番に定着したネビンは打率.288、114安打を記録し、コンスタントに快打を重ね打線をけん引している。さらに、開幕から全試合出場を継続しており、来日1年目から離脱せず好成績を残し続けている点は特筆に値する。出塁率も.362と優秀で、打率と出塁率の差を示す「IsoD」は.074と一定の水準。勝負強い打撃を見せるだけでなく、チャンスメイク能力にも優れている点が、価値を高めている。

 また、12本塁打という成績に加えて、本塁打を1本放つのに必要となる打数を示す「AB/HR」もリーグ6位の33.00と、一定以上の長打力も備えている。さらに、リーグトップとなる22本の二塁打を記録し、長打率もリーグ4位の.434と多くの塁打を生み出している点も注目すべきポイントだ。

 選球眼の優秀さと塁打の多さが相まって、OPSもリーグ2位の.797という数字を記録。打撃ランキングの各部門で上位に入っているだけでなく、パ・リーグ内でも屈指の生産性を誇る打者の一人であることが、各種の指標において示されている点は頼もしい要素だ。

 さらに、450打席で56三振というコンタクト能力の高さもネビンの強みだ。四球を三振で割って示す、選球眼を示す指標の一つである「BB/K」も0.68と一定以上の水準にあり、ストライクゾーンを管理する能力の優秀さを示している。

 本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「BABIP」が.306と、基準値の.300を上回っている点もコンタクト力の高さと噛み合っている。三振を喫する頻度が低く、打球を前に飛ばす回数が多いというネビンの特性が、一定以上の値を記録しているBABIPと相まって、安打の量産につながっていることがうかがえる。

 MLB時代は通算のIsoDが.095と優れた選球眼を発揮した一方で、通算打率は.204と確実性を欠き、通算OPSも.614と高くはなかった。通算BABIPが.251と運に恵まれなかったことも示唆されているだけに、打球の強さが増し、基準値に近いBABIPを記録しているNPBにおいて、本来の実力を発揮できるようになったという考え方もできそうだ。

 就任1年目の西口文也監督のもとで戦う西武において、安定した働きを続ける2人の助っ人は、今やチームに欠かせない存在になりつつある。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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