育成2年で考えた“断念”…3年目に届いた吉報 入山海斗「ダメだったら仕方がない」

オリックス・入山海斗【写真:小林靖】
オリックス・入山海斗【写真:小林靖】

オリックス・入山海斗「落ち着いてマウンドに立てています」

 育成契約から支配下選手登録されたプロ3年目のオリックス・入山海斗投手が、九里亜蓮投手や主将の頓宮裕真捕手らのアドバイスで、成長を続けている。「先輩の選手やコーチの方々の助言で、落ち着いてマウンドに立てています」。入山が感謝の言葉を口にした。

 大阪府守口市出身。日高中津分校(和歌山)、東北福祉大から2022年育成ドラフト3位でオリックスに入団。1年目からファームで抑えとして起用され、最速154キロのストレートを武器にウエスタン・リーグで44試合に登板。5勝3敗13セーブ、防御率2.36の成績を残した。プロ2年目は39試合で3勝2敗8セーブ、防御率3.18と伸び悩んだが、3年目の7月に「パワーピッチャーが必要」というチーム方針で横山楓投手とともに、支配下選手入りを果たした。

 初登板は、1軍選手登録をされた9日後の8月14日の楽天戦(京セラドーム)だった。ファームでの最終登板から13日間も間隔が空く、調整の難しいマウンド。落ち着かない日々を過ごしてきた入山は、試合前の選手食堂で九里に「マウンドに登るときに緊張しないですか」と聞いてみた。九里からは「ちゃんと準備をして、あとはもうやるだけだから」と返ってきた。シンプルだが、基本の大切さを説くもの。最多勝を獲得したことのあるプロ12年目の右腕の言葉に、心を静めることができ、1‐5の9回からのプロ初登板を打者3人で仕留めることができた。

 2度目の登板は、6点差を太田椋内野手の満塁本塁打、中川圭太内野手の同点2ラン、延長12回の廣岡大志内野手のサヨナラ本塁打で逆転した8月17日の西武戦(同)。負けパターンの初登板とは違い、6‐6の延長11回という厳しい場面で、2死から安打を許したが平沼翔太外野手からストレートで空振り三振を奪い、同時に支配下登録された横山楓投手につないでサヨナラ勝ちを呼び込んだ。

 この試合では、頓宮の言葉に救われた。先頭の源田壮亮内野手に対し、2球連続してボールに。すかさず一塁から頓宮がマウンドに駆けつけ「負けても俺らのせいやから、気にせんと投げたらいい」と声を掛けた。「2球とも力みが出てボールが高めに浮いていたんです。あの言葉でホッとしたというか、落ちつけたんです」と入山は振り返る。

 初登板の時にマウンドに送り出してくれた比嘉幹貴投手コーチの「楽しんで頑張って。できないことをしようとせず、今できることをやればいいから」という言葉も思い出した。「プレッシャーもあったんですが、どうやってもダメだったら仕方がないと思って。だから、自分のできることだけをしようと思ったんです」と振り返る。

「まだ2試合目でこんな大事な場面で投げさせてもらえたことは、すごくいい経験になりました。結果はよかったんですが、次もありますから」。プロ2年目で支配下を勝ち取れず、野球を断念することも考えた。やっと掴んだチャンスを生かすためにも、シーズン終盤の大事な試合でチームに貢献することを誓う。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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