体調不良なのに…専門家が称賛した大谷翔平の“2つのプレー” 垣間見えたメンタルの強さ

パイレーツ戦に出場したドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
パイレーツ戦に出場したドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

NPB通算2038安打の野球評論家・新井宏昌氏が分析

【MLB】パイレーツ 3ー0 ドジャース(日本時間4日・ピッツバーグ)

 ドジャースの大谷翔平投手は3日(日本時間4日)、敵地で行われたパイレーツ戦で、予定されていた先発登板を「体調不良」のため回避。それでも「1番・指名打者」で出場し、5打数2安打の結果を残した。“激走”で内野安打をもぎ取り、さらにタッチアップで次の塁を2度奪って見せた。野球解説者の新井宏昌氏は「走塁面に大谷の思いが表れていた」と指摘した。

 0-3とリードされて迎えた7回の攻撃。1死から三塁内野安打で出塁した大谷は、次打者のムーキー・ベッツ内野手が右飛を打ち上げると、1度はハーフウェーで一、二塁間まで進みながら、右翼手の捕球を見て一塁ベースに戻り、そこからタッチアップ。猛然とスタートを切った。右翼手が慌てて返球するも、大谷は悠々と二塁に到達していた。

「一塁から二塁へのタッチアップは、二塁から三塁に比べると当然リスクが高くなります。危険を冒さなくても……という状況ではありましたが、大谷は右翼手の肩の強さも頭に入れていたはずですし、相手にリードされていただけに、得点圏に行っておけばヒット1本で1点になるという思いが強かったのだと思います」

 さらに「この日の大谷からは、体調不良を気力でカバーしようという思いがうかがえました。自分の先発回避で代役を務めた(エメ・)シーハン(投手)をはじめ、他の選手や首脳陣に迷惑をかけてしまった申し訳なさ、責任を強く感じていたのだと思います」と推察する。体調不良の時に集中力を保つのは普段より難しいはずだが、そこで抜け目のない走塁を見せたところに大谷の凄みの一端がある。

 5回無死一、二塁の場面でも、ダルトン・ラッシング捕手の打球を相手の右翼手がジャンピンクキャッチした瞬間、二塁からすかさずタッチアップし三塁へ。7回の打席では、相手のリリーフ左腕エバン・シック投手の内角高めの速球に詰まらされ、「(手が)いてーっ!」と声を上げながらも、ボテボテの三ゴロを快足で内野安打にした。

「速いフォーシームに対しては1球もバットに当たらない状況だった」

 一方、打撃では「ラッキーに恵まれた」と新井氏は評する。5回先頭打者としてパイレーツ2番手の右腕マイケル・バローと対戦した大谷は、3球目の143キロのチェンジアップが真ん中低めに来たところを捉え、右中間を深々と破る二塁打を放った。

「この日の大谷は体調不良のせいか、速いフォーシームに対しては、前に打ち返せないどころか、1球もバットに当たらない状況でした。(二塁打は)チェンジアップを見極めて打ったというより、ストレートのタイミングで振り出し、偶然ドンピシャで合った感じでした」と新井氏は分析する。実際、この日大谷に対して投じられた計20球中、152キロ以上の速球は6球あったが、空振りと見送りストライクとボールがいずれも2球ずつで、1球も捉えられなかった。

 ドジャースは結局0-3と完封負けを喫し、ナ・リーグ中地区最下位のパイレーツに2連敗。ただ、同西地区2位の宿敵パドレスもオリオールズに敗れて4連敗となり、地区優勝争いでは2.5ゲーム差をキープした。最悪に近い体調でも最大限の貢献をしようとする大谷の姿勢は、シーズン最終盤のこれから、ますます大きな意味を持ちそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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